MX Linuxとは?軽量で安定したDebian系ディストロのインストールと使い方【初心者向け】

宮崎智広 この記事の監修:宮崎智広(Linux実務・教育歴20年以上・受講者3,100名超)
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「軽くて安定したLinuxを探しているけれど、紹介される候補はUbuntuベースのものばかり。Ubuntu系以外で、長く落ち着いて使える定番はないだろうか」。古いパソコンを軽く延命したい、あるいは余計な変化の少ない堅実なLinuxがほしいというときにLinuxを調べ始めると、ここで手が止まる人は意外と多いです。

結論から言うと、その条件にぴたりと合うのがMX Linux(エムエックス・リナックス)です。MX Linuxは、Debian(デビアン)の安定版をそのまま土台にした軽量ディストロで、派手さはないものの、入れたあと長く落ち着いて使える堅牢さに定評があります。MintやZorin OSがUbuntu系なのに対し、MX LinuxはUbuntuを経由せず直接Debianを土台にしている点が決定的な違いで、これが「枯れた安定感」の源になっています。

この記事では、MX Linuxとは何かという基礎から、ISOのダウンロード・USBメモリでの起動メディア作成・インストール、そして日本語入力の設定や独自のMX Toolsの使い方、そして初心者がつまずきやすい「initの選択」の話まで、初めての人がそのまま手を動かせる順番で解説します。どのディストリビューションにするか比較中の段階なら、最後に選び方のハブ記事も案内します。

この記事のポイント

・MX LinuxはDebian安定版ベースの軽量で堅牢な初心者向けLinux
・antiXと共同開発。独自のMX Toolsで設定をGUIから完結できる
・インストールはISO入手→USBメモリ作成→お試し起動→インストールの順
・標準は軽量なXfce版。KDE版・Fluxbox版も選べる


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MX Linuxとは|Debian安定版ベースの軽量で堅牢なLinux

MX Linux(エムエックス・リナックス)は、無償で使えるデスクトップ向けのLinuxディストリビューションです。ディストリビューションとは、Linuxカーネルにアプリや設定をまとめ、インストールすればすぐ使える形に仕上げたものを指します。MX Linuxはその中でも、軽さと安定性を高い次元で両立していることで、世界中の利用者から長く高い評価を受けています。

MX Linuxの最大の特徴は、Debianの安定版(stable)をそのまま土台にしていることです。後述するように、MintやZorin OSといった人気の初心者向けLinuxはUbuntuをベースにしていますが、そのUbuntuもさらにDebianをベースにしています。MX LinuxはUbuntuを経由せず、直接Debianの安定版を土台にしている点が決定的に異なります。Debian安定版は、機能の新しさよりも動作の安定を最優先する設計思想で知られており、その堅牢さをそのまま受け継いでいるのがMX Linuxの強みです。

なぜMX Linuxは人気なのか

MX Linuxが世界的に支持される理由は、大きく3つあります。1つ目は、いま述べたDebian安定版ゆずりの堅牢さです。頻繁に大きく仕様が変わることがなく、入れたあと長く落ち着いて使えます。2つ目は、軽快さです。標準のデスクトップに軽量なXfceを採用しており、メモリの少ない古いパソコンでもきびきび動きます。3つ目は、後述する独自のユーティリティ群「MX Tools」の使い勝手のよさです。本来ならコマンドで行う細かな設定を、マウス操作だけで完結できます。

私のセミナーでも「一度入れたら、しばらく構成を変えずに腰を据えて使いたい」という受講生にはMX Linuxをすすめることがあります。実際に触ってみると、軽いのに作りが丁寧で、長く付き合える安心感があることに気づく方がほとんどです。

DebianベースとMint・Zorin(Ubuntuベース)の違い

ここはMX Linuxを理解するうえで最も重要なポイントなので、少し丁寧に説明します。Linuxのディストリビューションには「系統」があり、多くの初心者向けLinuxは「Debian系」に属します。MX LinuxもDebian系で、パッケージ管理(アプリの導入・更新の仕組み)にはaptを使います。

同じDebian系でも、MintやZorin OSはDebianを直接ではなく、Debianを土台にしたUbuntuをさらにベースにしています。いわばDebianが祖父、Ubuntuが親、Mint・Zorinが子という関係です。一方のMX Linuxは、Ubuntuという親を飛ばして、Debianを直接の土台にしています。

この違いは実用面に表れます。Ubuntuベースのディストロは、最新の機能やドライバが比較的早く取り込まれる反面、その分だけ変化も大きくなります。Debian安定版を直接の土台にするMX Linuxは、最新機能の取り込みは控えめでも、その代わり構成が枯れていて壊れにくいのです。「新しさより、まず安定」を求めるなら、Ubuntuを経由しないMX Linuxの設計はひとつの明快な答えになります。系統そのものをもっと深く理解したい方は、Linuxのディストリビューション入門|Ubuntu・Rocky Linux・Debianの違いと選び方を先に読んでおくと、この後の話がすっと入ってきます。

antiXとの共同開発とMX Tools

MX Linuxは、「MEPIS」と「antiX(アンティックス)」という2つのコミュニティの協働から生まれたディストロです。とくにantiXは、ごく低スペックのパソコンでも動く超軽量Linuxとして知られており、その軽量化のノウハウがMX Linuxの軽快さの土台になっています。

そしてMX Linux最大の独自価値が、「MX Tools(エムエックス・ツールズ)」と呼ばれる設定ユーティリティ群です。これは、本来ならターミナルでコマンドを打って行うような設定作業を、すべてマウス操作のGUIで完結できるようにまとめた、MX独自の道具箱です。たとえばドライバの導入、起動の修復、システムのバックアップ、不要なソフトの削除などを、項目を選んでクリックするだけで実行できます。初心者がコマンドの壁にぶつかりやすい場面を、MX Toolsがかなり肩代わりしてくれるわけです。この使い勝手のよさが、MX Linuxが長年人気を保っている大きな理由になっています。

3つのエディション|Xfce・KDE Plasma・Fluxbox

MX Linuxには、デスクトップ環境(画面の見た目と操作感を担う部分)が異なる複数のエディションがあります。どれを選んでも中身のMX Linuxであることは同じで、見た目と動作の軽さが変わるだけです。

Xfce(エックスエフシー):MX Linuxの標準エディション。軽量で安定しており、迷ったらこれ。古いPCから現行PCまで幅広く快適
KDE Plasma(ケーディーイー・プラズマ):見た目が華やかで多機能。比較的新しめのPCで、リッチなデスクトップを使いたい人向け
Fluxbox(フラックスボックス):3つの中で最も軽量。ごく低スペックの古いマシンを動かしたい人向けの、antiX由来の超軽量版

初めてなら、標準のXfce版を選んでおけば間違いありません。軽さと安定のバランスが最もよく取れています。見た目の華やかさや多機能を重視するならKDE版、メモリが1GB前後しかないような相当古いマシンを動かしたいならFluxbox版が向きます。「とにかく軽さ重視で古いPCを動かしたい」という方は、MX Linuxを含めた軽量ディストロの比較を軽量Linuxディストリビューションおすすめ比較|古いPCでも軽快に動く選び方でまとめているので、そちらが本命の入口になります。

MX Linuxの動作要件|必要メモリと対応PC

インストール前に、手元のパソコンがMX Linuxを動かせるかを確認しておきましょう。標準のXfce版が示す最低要件と、現実的な推奨ラインは次の通りです。

項目最低要件(Xfce)快適に使う推奨
メモリ(RAM)1GB2GB以上
ストレージ空き容量10GB20GB以上
CPUi686以上のCPUデュアルコア以上
光学/USBUSBブート対応USBブート対応

注目したいのは、最低要件のメモリが1GBと、MintやZorin OSより低いことです。これはXfceの軽さと、antiX由来の軽量化ノウハウが効いている結果です。メモリ1GBでも起動しますが、ブラウザでタブをたくさん開くような使い方では、2GBあると安心です。手元のメモリ容量は、乗り換え前のWindows上でタスクマネージャーを開けば確認できます。さらにメモリが少ない極端な低スペック機なら、前述のFluxbox版が候補になります。

対応PCについては、ここ10年以上の幅広い世代のWindowsパソコンで、おおむね動作します。むしろWindows 11の要件を満たさず買い替えを迫られたような古いマシンこそ、軽量で堅牢なMX Linuxで延命するのに向いています。なお、メモリやスペックを踏まえた踏み込んだディストロ比較は本記事では繰り返しません。スペック軸で選びたい方は前述の軽量比較記事を参照してください。

MX Linuxのインストール手順

ここからが本番です。インストールは「ISOを入手する」「USBメモリで起動メディアを作る」「お試し起動して試す」「インストールする」の4ステップで進みます。順番を飛ばすとデータ消失につながるので、上から順に進めてください。

1. 事前準備|データのバックアップ

最初に、消えて困るデータを必ず別の場所へ逃がします。OSの入れ替えはディスクの初期化を伴う前提で考えてください。写真・文書などの大切なファイルは、外付けドライブやクラウドストレージへ先に退避しておきます。これは実務でも鉄則で、私が現場で最も多く見かけるトラブルが、このバックアップを省いたことによるデータ消失です。

2. ISOファイルをダウンロードする

MX Linuxの公式サイト(mxlinux.org)の「Download」ページから、エディションを選んでISOイメージをダウンロードします。前述の通り、まずは標準のXfce版を選んでおけば間違いありません。「MX-(バージョン番号)_x64.iso」のような名前の64ビット版を選びます。ファイルサイズは2GB前後あるため、有線または安定したWi-Fi環境でダウンロードしてください。

ダウンロードしたISOファイルが破損していないかは、公式が公開しているチェックサム(ファイルの指紋のような値)で照合できます。Linux環境がある場合は、次のようにsha256sumで確認します。

# ダウンロードしたISOのSHA256ハッシュ値を計算する $ sha256sum MX-23_x64.iso a1b2c3d4e5f6...(長い英数字の文字列) MX-23_x64.iso # この値が公式サイトに記載のチェックサムと一致すればOK

3. USBメモリで起動メディアを作成する

ダウンロードしたISOを、USBメモリに書き込んで「起動できる状態」にします。容量は8GB以上のUSBメモリを用意してください。書き込むとUSBメモリの中身は消えるので、空のものを使います。

WindowsからならRufus(ルーファス)、Linux/Mac環境ならbalenaEtcherといった専用ツールを使うのが簡単です。すでにLinux環境が手元にある場合は、ddコマンドでも作成できます。次はddでの書き込み例です。書き込み先のデバイス名(/dev/sdX)を間違えると別のディスクを破壊するため、対象の確認は慎重に行ってください。

# 接続中のディスクを一覧表示し、USBメモリのデバイス名を確認する $ lsblk NAME SIZE TYPE MOUNTPOINT sda 476G disk sdb 14G disk ← これがUSBメモリ(/dev/sdb) # ISOをUSBメモリ全体へ書き込む(of= の指定先を間違えないこと) $ sudo dd if=MX-23_x64.iso of=/dev/sdb bs=4M status=progress oflag=sync

ddでのUSBブート作成の詳しい手順や、bscountといったオプションの意味は、ddコマンドでディスクイメージを作成・書き込みする方法|bs・countの指定やUSBブート作成もで個別に解説しています。コマンドに不慣れなら、まずはRufusなどのGUIツールから始めるのが安全です。

4. USBから起動してインストールする

作成したUSBメモリをパソコンに挿し、そこから起動します。多くのパソコンは、電源投入直後にF12やF2などのキーを押すと、起動デバイスを選ぶメニューが出ます(キーは機種により異なります)。USBメモリを選ぶと、MX Linuxが「お試し起動(ライブ起動)」で立ち上がります。

この段階ではまだインストールされておらず、USB上で動いているだけです。ここでWi-Fiの認識や画面表示に問題がないかを確認できます。問題なければ、デスクトップ上の「インストール(Installer)」アイコンをダブルクリックしてインストーラーを起動します。あとは画面の案内に沿って、言語で「日本語」を選び、タイムゾーンやユーザー名・パスワードを設定していくだけです。ディスクの使い方を選ぶ画面では、内容をよく読んでから進めてください。

「いきなり実機に入れるのは不安」という場合は、仮想環境で一度試してから本番に移る手もあります。実機・仮想環境・VPSのどれで練習するのが向いているかは、Linuxの勉強に実機環境は必要か|VM・VPS・実機の選び方で整理しています。

MX Linuxの日本語化・初期設定

インストール時に言語で日本語を選んでいれば、メニューや表示はすでに日本語になっています。残るは「日本語入力」と「初期アップデート」です。この2つを済ませれば、普段使いの準備は整います。

1. システムを最新の状態に更新する

まず、インストール直後のシステムを最新にします。これはセキュリティ上も重要な最初の一手です。後述するMX Toolsの「MXアップデータ」からも更新できますが、ターミナルからまとめて実行することもできます。

# パッケージ一覧を最新化し、インストール済みソフトをまとめて更新する $ sudo apt update $ sudo apt upgrade -y

2. 日本語入力(Fcitx5+Mozc)を設定する

MX Linuxは表示は日本語でも、初期状態では日本語の「入力」までは有効になっていないことがあります。日本語を打てるようにするには、入力メソッド(Fcitx5)と日本語変換エンジン(Mozc)を導入します。Mozcは、Googleが開発した日本語入力の仕組みをベースにしたもので、変換精度に定評があります。

# 入力メソッドFcitx5と日本語変換エンジンMozcを導入する $ sudo apt install -y fcitx5 fcitx5-mozc # 入力メソッドフレームワークをFcitx5に切り替える $ im-config -n fcitx5 # 設定を反映させるため、一度ログアウトして再ログインする

導入後は、一度ログアウトして再ログインしてください。これで設定が反映されます。再ログイン後、画面右下のキーボードアイコンや「入力メソッド」の設定でMozcが選ばれていれば準備完了です。日本語と英語の切り替えは、Windowsと同じ「半角/全角」キーで行えます。切り替わらない場合は、Fcitx5の設定で切り替えキーを確認してください。

3. 基本アプリを確認・追加する

MX Linuxには、最初からウェブブラウザ(Firefox)、オフィスソフト(LibreOffice)、メールソフト、画像ビューアなど、日常作業に必要なものが一通りそろっています。ブラウザとオフィス文書中心の使い方なら、同等の無償ソフトで困ることはほとんどありません。足りないアプリは、後述するMX独自の「MXパッケージインストーラー」やソフトウェア管理から追加できます。

MX Linux最大の武器|MX Toolsの使い方

初期設定が終われば、あとは普通のパソコンとして使えます。ここでは、MX Linuxを使ううえで最も価値のある独自機能「MX Tools」を紹介します。これを使いこなせるかどうかで、MX Linuxの快適さが大きく変わります。

MX Toolsとは|コマンドなしで設定を完結する道具箱

MX Toolsは、アプリ一覧から「MX Tools」を開くと表示される、設定ユーティリティ群です。ウィンドウに項目がずらりと並び、それぞれをクリックすると、対応する設定画面が開きます。本来ならターミナルでコマンドを打って行うような作業を、すべてマウス操作で完結できるのが最大の利点です。初心者がコマンドの壁にぶつかりやすい場面を、ここでまとめて肩代わりしてくれます。

初めて使うときに押さえておくと便利な、代表的なツールを挙げておきます。

MXパッケージインストーラー:人気アプリやドライバを、一覧から選んでクリックするだけで導入できる
MXアップデータ:システムの更新を、状態を見ながらGUIで安全に実行できる
MXスナップショット:今のシステム状態を丸ごとISOイメージとして保存し、別のPCへ複製・バックアップできる
MXブートリペア:起動がうまくいかなくなったとき、ブート設定を修復できる

とくに「MXスナップショット」は、他のディストロではなかなか手軽にできない、MX Linuxならではの強力な機能です。設定し終えた自分専用のMX Linuxを、そのままISOにして保存・再配布できるため、同じ環境を別のPCにそっくり再現したいときに重宝します。

MXパッケージインストーラーでアプリを追加する

新しいアプリを入れたいときは、MX Toolsの中にある「MXパッケージインストーラー」を使うのが最も簡単です。人気アプリがカテゴリ別に整理されており、チェックを入れて進めるだけで導入できます。コマンドを使わずに済むため、初心者はまずこちらに慣れるとよいでしょう。

コマンドに慣れてきたら、ターミナルからaptで直接導入することもできます。例えば画像編集ソフトのGIMPを入れるなら、次のようにします。

# MXパッケージインストーラーと同じことをコマンドで行う例(GIMPを導入) $ sudo apt install -y gimp

GUIでもコマンドでも、導入されるアプリは同じです。最初はMX Toolsから、慣れてきたらコマンドで、と段階を踏めば無理なくLinuxの操作に馴染めます。

MX Linuxのinitは選択式|systemd論争に中立という設計

MX Linuxを語るうえで欠かせない、もうひとつの特徴が「init(イニット)システムが選択式」であることです。少し専門的な話になりますが、MX Linuxらしさを理解するうえで大切なので、初心者向けにかみくだいて説明します。

initとは、OSの電源を入れたときに最初に動き出し、各種サービスの起動を取り仕切る、いわば「Linuxの土台の土台」にあたる仕組みです。現在の多くのLinuxは「systemd(システムディー)」という新しいinitを採用していますが、MX Linuxは既定で「sysVinit(シスブイ・イニット)」という、より伝統的で軽量なinitを使っています。これがMX Linuxの軽さと安定の一因にもなっています。

とはいえ、systemdを前提とする一部のアプリやサーバー用途もあるため、MX Linuxは起動時のメニューからsystemdを選んで立ち上げることもできます。つまり、初心者は普段の使い方ではsysVinitのまま気にせず使え、systemdが必要になったときだけ切り替えられる、という柔軟さを持っているのです。「systemdか、それ以外か」という長年の論争に、どちらか一方を強制せず中立を保ちながら、軽さと安定を実現している。この姿勢こそが、玄人筋からもMX Linuxが支持される理由のひとつです。

普段使いの初心者は、このinitの違いを意識する必要はほとんどありません。ただ「MX Linuxは標準では軽いsysVinitで動いているが、必要ならsystemdにも切り替えられる」とだけ覚えておけば十分です。なぜMX Linuxがこの設計を選んでいるのか、その背景や技術的な意味をもう一段深く知りたい方は、systemdを疑うエンジニアが増えている——MX Linux人気上昇が示す「init設計」の本質で掘り下げて解説しています。本記事はインストールと使い始めに集中するため、initの詳細はそちらに委ねます。

こんな人におすすめ|別の選択肢も知りたいときは

MX Linuxは、次のような人に特に向いています。古いパソコンを軽く延命したいが、その軽さだけでなく「長く落ち着いて使える安定感」も両立させたい人。そして、UbuntuベースのMintやZorin OSとは別の選択肢として、Debian安定版を直接土台にした堅実なLinuxを使ってみたい人です。MX Toolsで設定をGUIから完結できるため、コマンドにまだ自信がない初心者でも扱いやすいのも利点です。

一方で、Windowsからの乗り換えで「見た目や操作感をできるだけWindowsに近づけたい」という希望が強いなら、Ubuntuベースの兄弟ディストロのほうが向く場合もあります。実績と情報量の豊富さで選ぶならLinux Mintとは?インストールから日本語設定・初期設定まで初心者向けに解説、見た目をWindowsそっくりにそろえたいならZorin OSとは?WindowsそっくりのLinuxをインストールして使う方法を、それぞれ導入手順としてまとめています。Debianの安定感で選ぶならMX Linux、Ubuntuの情報量とWindowsらしさで選ぶならMint・Zorin、と考えるとよいでしょう。

また、サーバー構築や開発の検証機がほしい、企業のシステムを見据えて学びたい、といった目的なら、Ubuntu ServerやRed Hat系のほうが適しています。自分の目的にどのディストロが合うかを整理したい方は、おすすめLinuxディストリビューション完全ガイド|目的別の選び方もで、用途別の選び方をまとめています。とにかく軽さを最優先にした比較は、前述の軽量Linuxディストリビューションおすすめ比較を入口にしてください。本記事はあくまで「MX Linuxを実際に導入して使い始める」ことに絞っているので、比較で迷っている段階ならこれらのハブ記事から戻ってくるのがおすすめです。

「日本語入力できない」など、つまずいたときの対処法

初心者がMX Linuxの導入直後によくつまずくポイントと、その対処をまとめます。多くは設定の反映漏れが原因で、落ち着いて確認すれば解決します。

日本語入力ができない・切り替わらない

最も多いのが、Fcitx5とMozcを入れたのに日本語が打てないケースです。原因のほとんどは、導入後の再ログインを忘れていることです。一度ログアウトして再ログインすれば反映されます。それでも切り替わらない場合は、入力メソッドがFcitx5になっているか、Fcitx5の設定でMozcが追加されているかを確認してください。切り替えキー(半角/全角)が別のキーに割り当てられていることもあるため、設定画面で実際の割り当てを見ておくと確実です。

USBから起動しない・お試し起動の画面が出ない

USBメモリから起動できないときは、まず起動デバイスの選択がUSBになっているかを確認します。パソコンによっては、設定(UEFI/BIOS)でセキュアブートを一時的に無効にしないとUSB起動できないことがあります。また、書き込み自体が失敗している可能性もあるので、別のツール(RufusやbalenaEtcher)で作り直すと解決する場合があります。それでも起動後の動作が不安定なときは、MX Toolsの「MXブートリペア」でブート設定を修復できる場合もあります。

一部のアプリが「systemdがない」と動かない

MX Linuxは標準ではsysVinitで動いているため、ごくまれにsystemdを前提とするソフトが正常に動かないことがあります。その場合は、パソコンの再起動時に表示される起動メニューから「systemd」を選んで立ち上げ直すと解決することがあります。普段使いのデスクトップ用途でこの問題に当たることはほとんどありませんが、特定のサーバーソフトなどを試す際に覚えておくと安心です。initの仕組みそのものを詳しく知りたい場合は、前述のinit設計の解説記事を参照してください。

本記事のまとめ

MX Linuxは、Debian安定版を直接の土台にした、軽量かつ堅牢な初心者向けLinuxです。UbuntuベースのMintやZorin OSとは系統が異なり、最新機能より安定を重視する枯れた作りが最大の魅力です。導入は、ISOを入手し、USBメモリで起動メディアを作り、お試し起動で確認してからインストールする、という流れで進めます。インストール後は、システム更新と日本語入力(Fcitx5+Mozc)の設定を済ませ、独自のMX Toolsを覚えれば、設定の多くをコマンドなしで完結できます。最後に、要点を一覧で振り返っておきます。

やりたいこと方法・コマンド
エディションを選ぶ標準はXfce版。華やか志向はKDE、超軽量はFluxbox
ISOの破損を確認するsha256sum MX-23_x64.iso
USB起動メディアを作る(CUI)sudo dd if=MX-23_x64.iso of=/dev/sdb bs=4M status=progress
システムを最新化するsudo apt update && sudo apt upgrade -y
日本語入力を導入するsudo apt install -y fcitx5 fcitx5-mozc
設定をGUIでまとめて行うアプリ一覧から「MX Tools」を開く
アプリを追加するMXパッケージインストーラー または sudo apt install パッケージ名

MX Linuxを入れてしまえば、「軽いLinuxは古くて不安定」というイメージが、いい意味で裏切られるはずです。まずは古いPCや手元のマシンで、お試し起動から一歩を踏み出してみてください。MX Toolsの便利さと、Debian安定版ゆずりの落ち着きに慣れたら、次はコマンドやサーバーの世界へ少しずつ広げていけます。

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宮崎 智広

この記事を書いた人

宮崎 智広(みやざき ともひろ)

株式会社イーネットマーキュリー代表。現役のLinuxサーバー管理者として20年以上の実務経験を持ち、これまでに累計3,100名以上のエンジニアを指導してきたLinux教育のプロフェッショナル。「現場で本当に使える技術」を体系的に伝えることをモットーに、実践型のLinuxセミナーの開催や無料マニュアルの配布を通じてLinux人材の育成に取り組んでいる。

趣味は、キャンプにカメラ、トラウト釣り。好きな食べ物は、ラーメンにお酒。休肝日が作れない、酒量を減らせないのが悩み。最近、ドラマ「フライトエンジェル」を観て涙腺が崩壊しました。