「CentOSはサポートが終わったと聞いた。じゃあ何を使えばいいの?」
Linuxを学び始めようとした初心者が最初につまずくのが、この「ディストリビューション選び」です。Windowsは「Windows 11」の1択、macOSも「macOS」の1択なのに、Linuxは選択肢が多すぎて途方に暮れてしまう。それは当然のことです。
この記事では、20年以上Linuxサーバーを運用してきた立場から、主要なディストリビューションの違いと、初心者が迷わず選べる基準をやさしく解説します。
この記事のポイント
・Linuxディストリビューションとは「Linux本体+ソフト詰め合わせ」のことで、種類が多くて当然
・学習目的の初心者にはUbuntu 24.04 LTS、サーバー実務ならAlmaLinux 9/Rocky Linux 9が第一候補
・Debian系(Ubuntu)とRed Hat系(Rocky Linux・AlmaLinux)の2大系統を押さえれば選べる
・WSL2・VPS・VirtualBoxで使う環境ごとのおすすめも解説
でも安心してください。プロのエンジニアはコマンドを暗記していません。
「現場で使える型」を効率よく使いこなしているだけです。
そもそも「ディストリビューション」とは何か?
Linuxを理解するうえで、まず「Linuxカーネル」と「ディストリビューション」の違いを知る必要があります。Linuxカーネルとは、OSの「心臓部」です。CPU・メモリ・ストレージといったハードウェアを管理する中核プログラムで、Linus Torvaldsが1991年に開発し、今も世界中のエンジニアによって進化しています。ただし、カーネルだけでは画面表示も、ファイルコピーも、ソフトのインストールもできません。
そこで必要になるのがディストリビューション(略して「ディストロ」)です。ディストリビューションとは、Linuxカーネルに「テキストエディタ」「パッケージ管理ツール(ソフトのインストール機能)」「シェル」「ログイン画面」などを組み合わせて、実際に使えるOSとして完成させたものです。
イメージとしては、こんな感じです。
・Linuxカーネル = エンジン(心臓部)
・ディストリビューション = 車全体(エンジン+ボディ+シート+ハンドル)
「Linux」と言う時は、多くの場合このディストリビューション全体を指しています。種類が多いのは、それぞれの団体・企業が「このエンジン(カーネル)を使って、自分たちの目的に合った車を作った」からです。
1. ディストリビューションの種類はなぜ多い?
Linuxはオープンソースなので、誰でも自由に改変・再配布できます。そのため、・サーバー運用に特化したもの(Red Hat Enterprise Linux など)
・初心者が使いやすいデスクトップ向けのもの(Ubuntu など)
・セキュリティ調査に特化したもの(Kali Linux など)
・組み込み機器向けのもの(Yocto Project など)
と、用途に合わせて多数のディストリビューションが生まれました。2026年現在、活発に開発が続けられているものだけで数十種類あります。
2. 初心者が知っておくべき「2大系統」
実務・学習の両面で押さえるべきは、大きく分けて2つの系統です。| 系統 | 代表的なディストリビューション | パッケージ管理 | 主な用途 |
|---|---|---|---|
| Debian系 | Ubuntu、Debian | apt(apt-get) | デスクトップ・開発・クラウド |
| Red Hat系 | AlmaLinux、Rocky Linux、RHEL | dnf(yum) | 企業向けサーバー・本番環境 |
主要ディストリビューションを比較する
初心者が候補に挙げることが多い主要なディストリビューションを、用途・特徴・向いている人の観点で比較します。1. Ubuntu(ウブントゥ)— 初心者の第一歩に最も向いている
UbuntuはCanonical社が開発・メンテナンスするDebianベースのディストリビューションです。・日本語を含む多言語対応が充実していて、導入のハードルが低い
・インターネット上の情報量が圧倒的に多く、エラーで困ってもすぐに解決策が見つかる
・2年おきに長期サポート版(LTS)がリリースされ、5年間は安定して使い続けられる
・WSL2でWindowsから利用できるため、実機を買わなくてもすぐに試せる
最新のLTSはUbuntu 24.04 LTS(Noble Numbat)で、2029年4月までサポートされています。2026年内にはUbuntu 26.04 LTSもリリースされており、新しい環境を選ぶなら26.04も選択肢に入ります。
こんな人におすすめ:Linux初挑戦・WSL2で試したい・デスクトップOSとして使いたい・クラウド開発環境を整えたい
2. AlmaLinux 9(アルマリナックス)— サーバー実務の学習に最適
AlmaLinuxはRed Hat Enterprise Linux(RHEL)の無償クローンとして、CloudLinux社が中心となって2021年にリリースしました。・RHELと高い互換性を持ち、企業の本番環境で使われているRHEL系の操作を無償で学べる
・安定性と長期サポートを重視した企業向けの設計
・dnf(旧yum)によるパッケージ管理を使い、企業のサーバー運用に直結した知識が身につく
・SELinux・firewalld・systemdなど、現場のサーバー管理に必要な技術が標準で含まれている
かつてはCentOSが同じ用途で広く使われていましたが、2022年にCentOS 8のサポートが終了し、AlmaLinuxやRocky Linuxへの移行が進んでいます。
こんな人におすすめ:インフラエンジニアを目指している・LPICやLinuCの資格取得を考えている・企業サーバーの運用を学びたい
3. Rocky Linux 9(ロッキーリナックス)— AlmaLinuxと並ぶRHEL互換の本命
Rocky LinuxはCentOSの創設者Gregory Kurtzerが立ち上げたプロジェクトで、AlmaLinuxと同じくRHELの無償クローンです。・AlmaLinuxとの違いは主に「コミュニティの運営方針」と「細かい互換性ポリシー」で、どちらを選んでも学習内容はほぼ同じ
・2026年現在、どちらも活発に開発・メンテナンスされており、どちらも安心して選べる
・AlmaLinuxと迷ったら、VPSやクラウドのデフォルトテンプレートで提供されているほうを選べばOK
こんな人におすすめ:AlmaLinuxと同じ用途。どちらでもほぼ同じ学習効果が得られる
4. Debian(デビアン)— 安定性を重視したUbuntuの「親」
DebianはUbuntuの元になったディストリビューションです。ボランティアコミュニティが運営し、非常に安定性を重視した設計で知られています。・最新機能よりも安定性を優先するため、ソフトウェアのバージョンがやや古い場合がある
・Webサーバーやメールサーバーなど、設定したら長期間変えないサーバー用途に向いている
・初心者向けの導入ガイドはUbuntuより少ないため、Ubuntuに慣れてから試すのが自然な順序
こんな人におすすめ:Ubuntu経験者でさらに安定性を追求したい・特定のサーバー用途での長期運用を考えている
5. Red Hat Enterprise Linux(RHEL)— 有料の「本家」
RHELはRed Hat社(現IBM傘下)が提供する商用Linuxディストリビューションです。AlmaLinuxやRocky LinuxはRHELを無償で再現したものです。・年間ライセンス費用が必要(企業向け)
・サポート・セキュリティパッチが手厚く、企業の本番環境で広く採用されている
・個人開発者向けに「Red Hat Developer Program」で一部無償利用が可能
こんな人におすすめ:業務上RHELを直接扱う必要がある・企業でのサーバー管理者になりたい(実際の現場ではAlmaLinux/Rocky Linuxで学習し、RHELの資格取得を目指すのが現実的)
用途・環境別のディストリビューション選び方
「どれが良いかわかった。でも、WSL2で使うのと、VPSを借りるのでは違うの?」という疑問に答えます。1. WSL2(Windows上のLinux)で始める場合
WSL2(Windows Subsystem for Linux 2)はWindowsの中にLinux環境を作る機能です。別のPCは不要で、今使っているWindowsにそのままインストールできます。おすすめ:Ubuntu 24.04 LTS または Ubuntu 22.04 LTS
理由はシンプルで、Microsoft StoreでUbuntuが公式にサポートされており、導入手順の情報が圧倒的に多いからです。
インストールの確認コマンド(PowerShellで実行):
# インストール可能なディストリビューション一覧を表示する > wsl --list --online # Ubuntu 24.04 LTSをインストールする > wsl --install -d Ubuntu-24.04 # インストール済みの一覧を確認する > wsl --list --verbose
2. VPS(クラウドの仮想サーバー)で始める場合
VPS(Virtual Private Server)はインターネット上に自分専用のLinuxサーバーを用意する方法です。ConoHa・さくらのVPS・Xserver VPSなど国内のVPSサービスで、月額数百円から始められます。デスクトップ系・Web開発:Ubuntu 24.04 LTS
サーバー実務・資格学習:AlmaLinux 9 または Rocky Linux 9
VPSで選ぶ際の実際の手順:
# VPS契約後、SSHで接続する # Ubuntuの場合(IPアドレスとユーザー名はVPS管理画面で確認) $ ssh ubuntu@xxx.xxx.xxx.xxx # AlmaLinux/Rocky Linuxの場合 $ ssh almalinux@xxx.xxx.xxx.xxx # または $ ssh rocky@xxx.xxx.xxx.xxx # 接続後、OSバージョンを確認する $ cat /etc/os-release
3. VirtualBox(PC上の仮想マシン)で始める場合
VirtualBox(オラクル社の無償仮想化ソフト)を使うと、今使っているPCの中に「仮想のPC」を作ってLinuxを動かせます。インターネット不要で、完全にオフライン環境で試せます。デスクトップ版で試す:Ubuntu 24.04 LTS
サーバー学習用:AlmaLinux 9 または Ubuntu Server 24.04 LTS
VirtualBoxのシステム要件の目安:
・RAM:8GB以上(4GB以下のPCには不向き)
・ディスク空き容量:20GB以上
・CPU:仮想化支援機能(Intel VT-x / AMD-V)が有効になっていること
VirtualBoxはPCへの影響が少なく、スナップショット(仮想マシンの状態を保存・復元)機能で「壊す前の状態に戻す」こともできます。コマンドを試して失敗しても、すぐに元に戻せるのが初心者には安心です。
初心者が迷った時の選び方まとめ
「それでもどれを選べばいいかわからない」という方のために、2026年現在の「最短の答え」をお伝えします。| 目的 | おすすめのディストリビューション | 理由 |
|---|---|---|
| とにかく試してみたい(WSL2) | Ubuntu 24.04 LTS | 導入が最も簡単、情報量が多い |
| サーバー構築を学びたい | AlmaLinux 9 / Rocky Linux 9 | 企業の本番環境(RHEL系)に直結する |
| Linux資格(LPIC・LinuC)を取りたい | AlmaLinux 9 + Ubuntu のどちらも | 試験はRHEL系の操作が中心、両系統の知識が必要 |
| VPSで自分のサーバーを持ちたい | Ubuntu 22.04/24.04 LTS | VPS各社の公式対応テンプレートが充実 |
| 古いPCでLinuxを動かしたい | Ubuntu 24.04 LTS(軽量版) | Xubuntu/Lubuntuなど低スペック向け派生版がある |
1. 「CentOSが終わったらどうすればいい?」への回答
以前からCentOSを使っていた方、またはCentOSを勉強していた方から多い質問です。・CentOS 7は2024年6月にサポート終了済み
・CentOS 8は2021年末にサポート終了済み
・CentOS Streamは開発版の位置づけで、本番環境には向かない
移行先のおすすめはAlmaLinux 9またはRocky Linux 9です。操作感はCentOSとほぼ同じで、過去にCentOSで学んだdnf・SELinux・firewalldの知識がそのまま活かせます。新しく学ぶ場合も、AlmaLinux 9から始めれば企業の現場に直結する知識が身につきます。
2. ディストリビューションを変えても「Linuxの基礎」は共通
ここが大切なポイントです。どのディストリビューションを選んでも、以下の知識は完全に共通です。・ファイル操作コマンド(ls、cd、cp、mv、rm)
・テキスト編集(vi/vim、nano)
・パーミッション管理(chmod、chown)
・プロセス管理(ps、kill、top)
・ネットワーク確認(ping、ip a、ss)
ディストリビューションが違っても、これらのコマンドは同じように動きます。「UbuntuとAlmaLinuxで全部覚え直し」というわけではなく、パッケージ管理(aptかdnfか)とサービス管理(systemctlの設定ファイルの場所の違い)が主な違いです。
実際にディストリビューションを確認するコマンド
自分のLinux環境がどのディストリビューションかを確認する方法を紹介します。初めてVPSやWSL2を起動した時にまず実行してみましょう。# ディストリビューション名とバージョンを確認する(ほぼ全てのディストリビューションで使える) $ cat /etc/os-release # Ubuntu 24.04 LTSの場合の出力例 PRETTY_NAME="Ubuntu 24.04.2 LTS" NAME="Ubuntu" VERSION_ID="24.04" VERSION="24.04.2 LTS (Noble Numbat)" ID=ubuntu ID_LIKE=debian HOME_URL="https://www.ubuntu.com/" SUPPORT_URL="https://help.ubuntu.com/" # AlmaLinux 9の場合の出力例 PRETTY_NAME="AlmaLinux 9.4 (Seafoam Ocelot)" NAME="AlmaLinux" VERSION_ID="9.4" VERSION="9.4 (Seafoam Ocelot)" ID=almalinux ID_LIKE="rhel centos fedora" HOME_URL="https://almalinux.org/"
# 詳細なカーネルバージョンも確認できる $ uname -r 6.8.0-48-generic # カーネルと基本的なシステム情報を一括表示する $ uname -a Linux myserver 6.8.0-48-generic #48-Ubuntu SMP PREEMPT_DYNAMIC ...
本記事のまとめ
Linuxのディストリビューション選びは、最初は難しく見えますが、2大系統(Debian系・Red Hat系)を理解すれば迷いがなくなります。| ディストリビューション | 系統 | パッケージ管理 | おすすめの用途 |
|---|---|---|---|
| Ubuntu 24.04 LTS | Debian系 | apt | 初心者・WSL2・クラウド・デスクトップ |
| AlmaLinux 9 | Red Hat系 | dnf | サーバー実務学習・企業環境・資格取得 |
| Rocky Linux 9 | Red Hat系 | dnf | AlmaLinuxと同様の用途 |
| Debian | Debian系 | apt | 長期安定運用サーバー・Ubuntu経験者向け |
| RHEL | Red Hat系 | dnf | 企業の本番環境・商用サポートが必要な場合 |
どのディストリビューションを選んでも、コマンドの基礎は共通です。「どれを選んでも間違いではない。大切なのは使い始めること」と覚えておいてください。
次に読みたい関連記事(実務スキル習得フェーズ)
ディストリビューションが選べたら、次は実際にコマンドを動かしてみましょう。以下の7テーマでは、本サイトで解説している実務スキルの入り口を紹介しています。・シェルスクリプト:シェルスクリプトカテゴリの記事一覧 — 繰り返し作業を自動化する力を身につけよう
・Linuxセキュリティ設定:セキュリティカテゴリの記事一覧 — SSH・ファイアウォール・SELinuxの基礎
・サーバー構築ハンズオン:Linuxサーバー構築(Rocky Linux/RHEL9)カテゴリ — 現行OSで実際にサーバーを組む
・トラブルシューティング:Linuxトラブルシューティングカテゴリ — 「動かない」を自分で解決する思考を養う
・ネットワーク診断・設定:ネットワークカテゴリの記事一覧 — ping・ip a・ssでネットワーク状態を確認する
・ファイルシステム・ストレージ管理:ディスク操作カテゴリの記事一覧 — df・du・マウントコマンドを使いこなす
・現場コラム系:Linuxtipsカテゴリの記事一覧 — 20年以上の運用経験から生まれた実践Tips
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