そう悩んでいるサーバー管理者は多いです。CentOS 8が2021年12月にサポート終了し、後継として登場したのがCentOS Stream 9・AlmaLinux 9・Rocky Linux 9の3つです。名前が似ているので混乱しがちですが、それぞれ設計思想も用途もまったく異なります。
この記事では、3つのディストリビューションの違いを具体的に解説し、どのような環境・目的にどれを選ぶべきかの判断基準を示します。CentOS 7からの移行手順も合わせて紹介します。
この記事のポイント
・CentOS Stream 9はRHEL開発の上流版で「次のRHEL」を先取りする
・AlmaLinux 9はRHEL 9と高い互換性を持つ無償の本番向けディストロ
・Rocky Linux 9はRHEL 9の厳密なクローンを目指す安定重視の選択肢
・本番環境の移行先はAlmaLinuxかRocky Linux、開発・テスト環境はStream
でも安心してください。プロのエンジニアはコマンドを暗記していません。
「現場で使える型」を効率よく使いこなしているだけです。
CentOS終了の経緯と3択の背景
2020年12月、Red HatはCentOS 8のサポートを2021年12月で打ち切ることを発表しました。従来のCentOSはRHEL(Red Hat Enterprise Linux)の無償クローンとして機能してきましたが、Red HatはCentOSをRHELの「上流開発版」に位置づけ直したのです。このCentOS 8終了を受けて生まれたのが次の3つの選択肢です。
・CentOS Stream 9:Red Hatが公式に提供する上流開発版(CentOSプロジェクトの後継)
・AlmaLinux 9:CloudLinuxが主導し、コミュニティが開発する無償RHEL互換ディストロ
・Rocky Linux 9:CentOSの創設者Gregory Kurtsevが立ち上げた厳密なRHELクローン
この3つはどれも無償で使えますが、位置づけと安定性に大きな差があります。それぞれの特徴を詳しく見ていきましょう。
CentOS Stream 9とは|「RHELの次」を試す開発用ディストロ
1. CentOS Streamの位置づけ
CentOS Stream 9は「フェドーラ → CentOS Stream → RHEL」というパイプラインの中間に位置します。つまり、次のRHELマイナーバージョンに取り込まれる予定のパッケージが、一足早くCentOS Streamで公開されます。従来のCentOS(8以前)はRHELがリリースされた後に作られていた「下流版」でしたが、CentOS Streamは「上流版」です。この違いは実務に直結します。
2. CentOS Stream 9の主な特徴
・ローリングリリース:固定のリリースサイクルではなく、継続的にパッケージが更新される・最新カーネルとパッケージ:RHELより新しいバージョンが入ることがある
・サポート期間:2027年5月31日まで(RHEL 9の開発期間に準拠)
・Red Hat公式管理:Red Hatがメンテナンスするため、ある程度の信頼性がある
逆に言えば、「パッケージが突然新しいバージョンになる」リスクがあるため、本番の安定サーバーには不向きです。
3. CentOS Stream 9が向いているケース
・RHELの開発・テスト環境:本番がRHELで、その予行演習をしたい場合・パッケージ開発・ビルド環境:最新パッケージに追随したい開発者向け
・学習・実験環境:コストをかけずにRHEL系の最新動向を追いたい場合
# CentOS Stream 9 のバージョン確認 [root@stream9 ~]# cat /etc/redhat-release CentOS Stream release 9 [root@stream9 ~]# cat /etc/os-release NAME="CentOS Stream" VERSION="9" ID="centos" ID_LIKE="rhel fedora" VERSION_ID="9" PLATFORM_ID="platform:el9" PRETTY_NAME="CentOS Stream 9"
AlmaLinux 9の特徴|RHELと高い互換性を持つ本番向けディストロ
1. AlmaLinuxの設計思想
AlmaLinux 9はRHEL 9との高いABI(Application Binary Interface)互換性を目指して開発されています。開発元はCloudLinux社ですが、AlmaLinux OSファウンデーションという非営利組織が管理しており、商業的な影響を受けにくい体制を取っています。2023年以降、Red HatがRHELのソースコードを顧客限定にしたため、AlmaLinuxは「RHELの完全クローン」から「ABI互換ディストロ」に方針を転換しました。この変更により、バイナリ互換は維持しつつもコードベースが独立しています。
2. AlmaLinux 9の主な特徴
・RHEL 9との高い互換性:RHELで動くソフトウェアが基本的にそのまま動く・サポート期間:2032年5月31日まで(RHEL 9のメインラインに準拠)
・エラータ配信速度:RHELのセキュリティパッチは通常数日以内に適用
・企業向け機能:FIPS 140-3認定・OVAL XMLデータ提供など
・多アーキテクチャ対応:x86_64・aarch64・ppc64le・s390xをサポート
3. AlmaLinux 9の実サーバー確認例
# AlmaLinux 9 のバージョン確認 [root@alma9 ~]# cat /etc/redhat-release AlmaLinux release 9.4 (Seafoam Ocelot) [root@alma9 ~]# cat /etc/almalinux-release AlmaLinux release 9.4 (Seafoam Ocelot) # RHEL 9 向けソフトウェアをそのまま実行できることを確認 [root@alma9 ~]# rpm -q glibc glibc-2.34-117.el9_4.2.x86_64
4. AlmaLinuxが向いているケース
・本番Webサーバー・DBサーバー:安定性と長期サポートが必要な環境・CentOS 8からの移行先:コマンド体系・パッケージ名がほぼ同一
・商用サポートが不要なケース:有償サポートはAlmaLinux社やサードパーティが提供
Rocky Linux 9の特徴|厳密なRHELクローンを目指す安定路線
1. Rocky Linuxの設計思想
Rocky Linux 9は、CentOSの創設者Gregory Kurtsevが「CentOSが果たすべきだった役割をそのまま引き継ぐ」というコンセプトで立ち上げたプロジェクトです。Rocky Enterprise Software Foundation(RESF)が管理しており、Red Hatのソースコード制限後も独自ビルドシステムで開発を継続しています。「RHELの完全なダウンストリーム互換」を明示的な目標に掲げており、AlmaLinuxの「ABI互換」よりも踏み込んだ互換性を目指しています。
2. Rocky Linux 9の主な特徴
・RHEL 9との高い互換性:パッケージ構成・バージョンをRHELに極力合わせる・サポート期間:2032年5月31日まで(RHEL 9に準拠)
・コミュニティの強さ:世界中の企業・個人が開発に参加する大規模コミュニティ
・企業向け採用実績:大学・研究機関での採用が多く、HPCクラスタへの利用も
・多アーキテクチャ対応:x86_64・aarch64・ppc64le・s390xをサポート
3. Rocky Linux 9の実サーバー確認例
# Rocky Linux 9 のバージョン確認 [root@rocky9 ~]# cat /etc/redhat-release Rocky Linux release 9.4 (Blue Onyx) [root@rocky9 ~]# cat /etc/rocky-release Rocky Linux release 9.4 (Blue Onyx) # rpm パッケージの確認 [root@rocky9 ~]# rpm -q glibc glibc-2.34-117.el9_4.2.x86_64
4. Rocky Linuxが向いているケース
・HPCクラスタ・研究用サーバー:学術・研究機関でのデファクトスタンダード・CentOSと同じ操作感を求めるケース:CentOS経験者には一番なじみやすい
・コミュニティサポートを重視するケース:フォーラムが活発で情報が得やすい
互換性比較表|AlmaLinux 9 vs Rocky Linux 9 vs CentOS Stream 9
| 比較項目 | CentOS Stream 9 | AlmaLinux 9 | Rocky Linux 9 |
|---|---|---|---|
| 位置づけ | RHELの上流開発版 | RHEL互換(ABI互換) | RHELのダウンストリームクローン |
| サポート期間 | 2027年5月31日 | 2032年5月31日 | 2032年5月31日 |
| 安定性 | ローリングリリースのため変動あり | 高い(本番向け) | 高い(本番向け) |
| RHELとの互換性 | 概ね互換(上流版のため差異あり) | ABI互換(高い) | ほぼ完全互換(クローン志向) |
| 推奨用途 | 開発・テスト・学習 | 本番サーバー全般 | 本番サーバー・研究用途 |
| 開発主体 | Red Hat | AlmaLinux OSファウンデーション | Rocky Enterprise Software Foundation |
| 商用サポート | Red Hatから有償で提供 | TuxCareなどサードパーティ | CIQ社(有償) |
サポート期間の比較|2032年まで安心できるか
1. RHEL 9のサポートロードマップ
RHEL 9のサポート期間は以下のとおりです。・フルサポート:2027年5月31日まで(セキュリティパッチ・バグ修正・機能追加)
・メンテナンスサポート:2032年5月31日まで(重大セキュリティパッチのみ)
AlmaLinux 9とRocky Linux 9はこのRHEL 9のサポート期間に準拠しています。一方のCentOS Stream 9は2027年5月31日が終了予定です。
2. CentOS 7からの移行猶予
CentOS 7のサポートは2024年6月30日に終了しました。すでにサポートが切れているため、CentOS 7環境は早急に移行が必要です。CentOS 7からの移行先として、AlmaLinux 9またはRocky Linux 9を推奨します。アーキテクチャの変更(systemd・firewallなど)があるため、単純なアップグレードではなく新規インストールと設定移行を行うのが確実です。
移行後のネットワーク設定確認には、Linux ポート確認の全コマンドも参考にしてください。
どれを選ぶべきか|用途別の選定基準
1. 本番サーバー(Webサーバー・DBサーバー)
AlmaLinux 9またはRocky Linux 9を選んでください。理由はシンプルで、サポート期間が2032年まであり、RHEL 9と高い互換性を持つため本番環境の安定運用に適しているからです。AlmaLinuxとRocky Linuxのどちらにするかは以下の基準で判断できます。
・AlmaLinuxを選ぶケース:FIPS認定が必要・セキュリティ要件が厳しい・TuxCareの商用サポートが必要
・Rocky Linuxを選ぶケース:学術・研究機関での利用・HPCクラスタ・CentOS経験者が多いチーム
2. 開発・テスト・CI/CD環境
CentOS Stream 9が適しています。本番がRHELや上記互換ディストロであれば、開発環境でCentOS Streamを使うことで「次のRHEL」の動作を先取りして確認できます。ただし、開発環境での予期しないパッケージ更新が発生する点は織り込んでおく必要があります。
3. 個人学習・資格試験(LPIC・RHCSA)
AlmaLinux 9またはRocky Linux 9が適しています。RHEL系の操作感を無償で学べるため、RHCSA(Red Hat Certified System Administrator)の試験対策に最適です。コマンド体系もRHEL 9とほぼ同じです。Linux 基本コマンドの解説も合わせて確認しておきましょう。
CentOS 7・CentOS 8からの移行手順
1. 移行の基本方針
CentOS 7からCentOS Stream 9・AlmaLinux 9・Rocky Linux 9へのインプレース(上書き)アップグレードは公式にはサポートされていません。推奨される手順は次の通りです。・新規インストール:新しいサーバーに対象ディストロをクリーンインストールする
・設定の移行:/etc配下の設定ファイルを手動で移植する
・パッケージ再インストール:dnfで同等パッケージをインストールする
・動作確認:アプリケーションの動作をテスト環境で検証する
2. AlmaLinux 9のインストール後の基本確認
# インストール後のバージョン確認 [root@alma9 ~]# cat /etc/redhat-release AlmaLinux release 9.4 (Seafoam Ocelot) # SELinuxの状態確認 [root@alma9 ~]# getenforce Enforcing # firewalldの状態確認 [root@alma9 ~]# systemctl status firewalld * firewalld.service - firewalld - dynamic firewall daemon Loaded: loaded (/usr/lib/systemd/system/firewalld.service; enabled; preset: enabled) Active: active (running) since Wed 2026-05-14 09:00:00 JST; 1h 30min ago # リポジトリの確認 [root@alma9 ~]# dnf repolist repo id repo name appstream AlmaLinux 9 - AppStream baseos AlmaLinux 9 - BaseOS extras AlmaLinux 9 - Extras
3. CentOS 8からAlmaLinuxへの変換ツール
CentOS 8(まだサポート内の時期であれば)からAlmaLinux 8へはalmalinux-deployツールによる変換が可能です。ただしCentOS 7からCentOS Stream 9・AlmaLinux 9・Rocky Linux 9へのメジャーバージョンアップは変換ツールでは対応していません。rpm コマンドの使い方を確認しておくと、パッケージ移行時のトラブルシュートに役立ちます。
よくある疑問・トラブルシュート
1. CentOS Stream 9は本番で使えないのか
「ローリングリリースで不安定」というイメージが先行しがちですが、実際にはRHELリリース前のパッケージが含まれるだけで、品質基準はRHELに近いレベルです。ただし、本番で求められる「同一バージョンでの長期固定運用」は難しく、月単位での更新が発生します。確認済みバージョンへの固定が必要な業務システムには不向きです。2. AlmaLinuxとRocky Linuxを混在させても問題ないか
アプリケーション単位での混在(例:AlmaLinuxのWebサーバーとRocky LinuxのDBサーバーの組み合わせ)は問題ありません。どちらもRHEL 9互換なので、ファイルのやり取りやRPMパッケージの共有も基本的に問題なく動作します。ただし運用管理の煩雑さを避けるため、社内標準を1つに統一することを推奨します。3. RHEL 9の有償サポートが必要なケース
以下の場合は、無償ディストロではなくRHEL 9(有償)を検討してください。・認定ソフトウェアを使う場合:Oracle DB・SAP・IBMなど特定商用製品がRHEL認定のみのケース
・コンプライアンス要件:PCI DSS・ISO27001などでRHELが指定されているケース
・Red Hatの公式サポートが必要:SLAが必要な基幹業務システム
本記事のまとめ
CentOS Stream 9・AlmaLinux 9・Rocky Linux 9の違いと選定基準をまとめます。| 用途 | 推奨ディストロ | 理由 |
|---|---|---|
| 本番Webサーバー | AlmaLinux 9 / Rocky Linux 9 | 2032年サポート・RHEL高互換 |
| 本番DBサーバー | AlmaLinux 9 / Rocky Linux 9 | 安定・長期サポート |
| 開発・テスト環境 | CentOS Stream 9 | RHELの上流版で最新動向を把握 |
| 学習・試験対策 | AlmaLinux 9 / Rocky Linux 9 | RHEL互換で無償学習に最適 |
| 研究・HPCクラスタ | Rocky Linux 9 | 学術機関での採用実績が豊富 |
| セキュリティ要件が高い本番 | AlmaLinux 9 | FIPS 140-3認定に対応 |
Linuxサーバーの設定・コマンドについてより詳しく学びたい方は、Linux 基本コマンドの解説もご覧ください。
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