Linux初心者向けインストール基礎知識|ディストロ選定からデュアルブート・仮想環境まで

宮崎智広 この記事の監修:宮崎智広(Linux実務・教育歴20年以上・受講者3,100名超)
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「Linuxをインストールしようとしたけど、どのディストリビューションを選べばいいかわからない」「デュアルブートに挑戦したら起動しなくなった」という話は、セミナーでも受講生から毎回のように聞きます。

最初の一歩でつまずくと、Linuxが嫌いになってしまいますよね。インストール作業には「地雷」がいくつかあって、それを知らずに踏んでしまう初心者が後を絶ちません。

この記事では、Linux初心者がインストール前に知っておくべき基礎知識を体系的に解説します。ディストリビューションの選び方から、インストール方式の種類、パーティション基礎、デュアルブートの注意点、VirtualBox/WSL2でのお試し方法、初期設定の流れ、そしてよくあるトラブルまでを一通りカバーします。

この記事のポイント

・初心者にはUbuntu LTSかAlmaLinux 9が鉄板の選択肢
・デュアルブート前にWindowsのBitLockerとファストスタートを必ず無効化する
・最初の練習はVirtualBoxかWSL2で行うと環境を壊さず安全
・パーティション設計は「/ と /home を分けるかどうか」が最初の判断ポイント


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ディストリビューションとは何か、どれを選ぶべきか

Linuxは「カーネル」と呼ばれるOS本体に、各種ツール・パッケージ管理・デスクトップ環境を組み合わせた「ディストリビューション(ディストロ)」という形で配布されています。Windows10やmacOSのように「Linuxを1種類ダウンロードする」のではなく、用途に応じて異なるディストロを選ぶのがLinuxの流儀です。

主要なディストリビューションを目的別に整理すると以下のようになります。

ディストロ ベース 向いている用途 初心者向け度
Ubuntu LTS Debian系 デスクトップ・クラウド・学習 ★★★★★
Debian Debian系 安定重視のサーバー ★★★☆☆
AlmaLinux 9 RHEL系 企業サーバー・資格学習 ★★★★☆
Rocky Linux 9 RHEL系 企業サーバー・RHEL互換 ★★★★☆
Fedora RHEL系 最新技術の試験環境 ★★★☆☆
Arch Linux 独立系 カスタマイズ・上級者向け ★☆☆☆☆

1. 学習目的ならUbuntu LTS一択

デスクトップでLinuxに慣れたい、クラウドで使いたい、プログラミング環境を整えたいという目的であれば、**Ubuntu LTS(Long Term Support)**を選んでおけば間違いありません。

Ubuntu LTSのメリットはこれだけあります。

・日本語情報が最も豊富(検索して出てくるハマりどころの解決策がたいてい見つかる)
・AWS/GCP/Azureの仮想マシンでデフォルト選択肢になっている
・5年間のセキュリティサポート(LTS版)
・パッケージ数が多く、apt一発でたいていのツールが入る

2024年4月にリリースされたUbuntu 24.04 LTSが現時点での推奨バージョンです。

2. 仕事でRHEL系を使うならAlmaLinux 9

企業のサーバーはRHEL(Red Hat Enterprise Linux)やそのクローンが圧倒的に多いです。Linux関連の資格(LPIC / RHCSA)を取りたい場合や、将来的に企業のサーバー管理者を目指す場合は、AlmaLinux 9かRocky Linux 9を選ぶのが正解です。

CentOS 7/8のサポートが終了した今、AlmaLinux 9はRHELとのバイナリ互換を維持しつつ、2032年まで無償でサポートが受けられる最有力候補です。

インストール方式を選ぶ(USB/DVD/PXE/仮想環境)

Linuxのインストール方式は大きく4種類あります。状況に応じて使い分けてください。

方式 メリット デメリット おすすめ度
USBブート 手軽・ほぼすべてのPCで動作 USBメモリが必要(8GB以上推奨) ★★★★★
DVDブート 昔からある定番 DVDドライブが必要・書き込みが面倒 ★★☆☆☆
PXEブート 複数台を一斉インストール可能 ネットワーク設定が必要・上級者向け ★★☆☆☆
仮想環境(VirtualBox/WSL2) 本体PCに影響なし・失敗しても即削除 ハードウェアアクセスに制限あり ★★★★★(初心者に最推奨)

1. USBブートメディアの作り方(実機インストール前準備)

ISOファイルをUSBメモリに書き込むには **Rufus**(Windows)または **balenaEtcher**(Windows/Mac/Linux)を使います。

注意点として、ISOファイルをUSBにそのままコピーしても起動しません。必ずブータブルメディア作成ツールを使ってください。Rufusの設定ではパーティションスキームを「GPT」、ターゲットシステムを「UEFI(非CSM)」に設定するのが現代のPC向けの標準です。

2. BIOSでの起動順変更

USBメモリからブートするには、PC起動時に特定のキー(F2・F10・Del・Esc などは機種によって異なる)を押してBIOS/UEFI設定画面に入り、起動優先順位をUSBメモリに変更します。

パーティション設計の基礎

パーティションはディスクを論理的に分割したものです。初心者がよく迷うのが「どう分けるか」です。

1. 最低限必要なパーティション(UEFI環境)

# UEFI環境での推奨パーティション構成(例:256GB SSD) /boot/efi 200MB FAT32 EFIシステムパーティション(必須) /boot 1GB ext4 カーネル・initramfsを格納 swap 4GB swap RAMの1~2倍を目安 / 残り ext4 ルートファイルシステム(全てここに収まる)

GBPTパーティションテーブルを使うUEFI環境では、EFIシステムパーティション(ESP)が必須です。ここにブートローダーが置かれます。

2. /home を分けるメリットとデメリット

/home を分けるメリット:OS再インストール時にユーザーデータをそのまま引き継げる
/home を分けるデメリット:/ が容量不足になっても /home から融通できない

サーバー用途では `/var`(ログが溜まるディレクトリ)を分けることが多いですが、学習用の最初の1台はシンプルに「/boot/efi + / + swap」の3パーティションで始めることをお勧めします。

パーティションの詳細な確認方法はmount コマンドの使い方も参照してください。

デュアルブートの手順と注意点

Windowsが入ったPCにLinuxを追加インストールする「デュアルブート」は、手順を間違えるとWindowsが起動しなくなる危険な作業です。20年以上のサーバー運用経験の中でも、デュアルブート失敗によるデータ消失の相談を数多く受けてきました。必ず以下の事前準備を行ってください。

1. 事前準備(これをしないと後悔する)

BitLocker を無効化する:BitLockerが有効だとLinuxインストーラーがWindowsパーティションを正しく認識できない場合があります。コントロールパネル > BitLockerドライブ暗号化 から無効化してください
ファストスタートアップを無効化する:Windowsが完全にシャットダウンされず、パーティションがロックされたままになります。電源オプション > 電源ボタンの動作 > 高速スタートアップを有効にする のチェックを外してください
Windowsのバックアップを取る:パーティション操作は不可逆な場合があります。重要なデータは外付けHDDやクラウドにバックアップを
回復ドライブを作成する:WinREで対応できる問題もあります。8GB以上のUSBメモリで「回復ドライブの作成」を実行しておく

2. GRUBのインストール先

Linuxインストーラーの最終段階で「ブートローダーのインストール先」を選ぶ画面が出ます。EFIシステムパーティション(/dev/sda1 などのFAT32パーティション)を選んでください。Windowsのシステムパーティションに誤って上書きしないよう、慎重に確認します。

3. GRUB2による起動メニューの確認

インストール後に再起動すると、GRUB2のメニューが表示されます。「Ubuntu(またはLinux)」と「Windows Boot Manager」の2行が表示されていれば成功です。デフォルトの起動OSはGRUBの設定ファイルで変更できます。

# GRUBデフォルト設定の確認 cat /etc/default/grub | grep GRUB_DEFAULT # GRUB_DEFAULT=0 の番号を変更してから以下を実行 sudo update-grub # Ubuntu/Debian系 sudo grub2-mkconfig -o /boot/grub2/grub.cfg # RHEL系

VirtualBox/WSL2でお試し(実機を汚さない安全な方法)

初心者に強くお勧めするのが、まず仮想環境でLinuxを体験することです。失敗しても仮想マシンを削除するだけなので、本体PCのWindowsには一切影響しません。

1. VirtualBoxで仮想マシンを作る(Linux独立環境)

VirtualBoxはOracle製の無料仮想化ソフトウェアで、Windows・Mac・Linuxで動作します。

・VirtualBox公式サイト(virtualbox.org)からインストーラーをダウンロード
・「新規」からLinux仮想マシンを作成(メモリ2GB以上・ストレージ20GB以上を推奨)
・ダウンロードしたISOをストレージ(光学ドライブ)にマウントして起動
・通常のインストール手順でLinuxを導入する

Guest Additionsをインストールすると、クリップボード共有・解像度の自動調整・共有フォルダが使えるようになり、作業効率が大幅に向上します。

2. WSL2で手軽にLinuxコマンドを使う(Windows統合型)

WSL2(Windows Subsystem for Linux 2)はWindows 10/11に組み込まれたLinux実行環境です。仮想マシンの起動なしにLinuxコマンドが使えるため、学習用として非常に便利です。

# PowerShellを管理者権限で開いてWSL2をインストール(Windows 10 バージョン2004以降) wsl --install # デフォルトはUbuntuがインストールされる # インストール後、PCを再起動してUbuntuを起動 # インストール可能なディストリビューションの一覧 wsl --list --online # 特定のディストロを指定してインストール wsl --install -d AlmaLinux-9

WSL2はLinuxのファイルシステムをWindows側から `\\wsl$\Ubuntu` でアクセスでき、VSCodeとの連携(Remote - WSL拡張機能)も強力です。

ただし、WSL2はLinuxカーネルをそのまま実行しているわけではなく、仮想化レイヤーを介しているため、カーネルパラメータ変更やデバイスドライバーの動作確認には向きません。本格的なサーバー運用の練習にはVirtualBoxか実機環境を使いましょう。

インストール後の初期設定の流れ

Linuxをインストールしたら、まず以下の初期設定を行います。インストール直後の状態で設定しておかないと、後で面倒なことになるポイントです。

1. システムのアップデート(最優先)

# Ubuntu/Debian系 sudo apt update && sudo apt upgrade -y # AlmaLinux/Rocky Linux/RHEL系 sudo dnf update -y

インストール直後のパッケージは古いままです。セキュリティパッチを含む最新パッケージを適用するため、最初にアップデートを実行してください。

2. タイムゾーンとロケールの設定

# タイムゾーンをAsia/Tokyoに設定 sudo timedatectl set-timezone Asia/Tokyo # 設定を確認 timedatectl # ロケール設定(Ubuntu) sudo locale-gen ja_JP.UTF-8 sudo update-locale LANG=ja_JP.UTF-8

3. SSHサーバーの有効化(リモート接続する場合)

# SSH サーバーのインストール(Ubuntu) sudo apt install -y openssh-server # SSH サービスの起動と自動起動設定 sudo systemctl enable --now ssh # AlmaLinux/Rocky の場合(通常デフォルトでインストール済み) sudo systemctl enable --now sshd

4. ファイアウォールの基本設定

# Ubuntu: ufw でSSH許可 sudo ufw allow ssh sudo ufw enable # RHEL系: firewalld でSSH確認(デフォルトで許可済み) sudo firewall-cmd --list-services --permanent

基本操作に慣れたら、Linux 基本コマンドの解説でコマンド操作の基礎を固めましょう。ls コマンドの基本オプションもインストール直後の確認作業でよく使います。

よくあるトラブルと対処法

「起動時にWindowsが選べなくなった」

GRUBにWindows Boot Managerが表示されない場合、GRUBを更新すると解決することが多いです。

# Ubuntu/Debianの場合(Linuxを起動した状態で実行) sudo os-prober # Windowsを検出できるか確認 sudo update-grub # GRUB設定を再生成 # os-proberが入っていない場合 sudo apt install os-prober

`os-prober` が Windowsを見つけられない場合、`/etc/default/grub` に `GRUB_DISABLE_OS_PROBER=false` を追加して `update-grub` を再実行してください。

「インストーラーがディスクを認識しない」

NVMe SSDをIntelのRSTモード(RAID mode)で使用している場合、LinuxインストーラーはNVMeドライブを認識できません。BIOS設定でストレージコントローラーを「AHCI」または「NVMe」モードに変更してください。変更するとWindowsが起動しなくなる場合があるため、事前にWindowsを「セーフモード経由でAHCIドライバーをインストール」する手順が必要です。

「Secure Bootが有効でLinuxが起動しない」

最新のUbuntu LTSはSecure Bootに対応していますが、一部のディストロはShimが署名されていないためSecure Bootを無効化する必要があります。BIOS/UEFI設定のSecurityセクションからSecure Bootを「Disabled」に変更してください。

「画面が真っ黒でGUIが起動しない(ドライバー問題)」

NVIDIAのGPUを搭載しているPCでオープンソースドライバー(Nouveau)との相性問題が起きることがあります。

# Ubuntu: NVIDIAプロプライエタリドライバーのインストール sudo ubuntu-drivers autoinstall # または手動でバージョンを指定 sudo apt install nvidia-driver-550 sudo reboot

本記事のまとめ

Linuxのインストール前に知っておくべき基礎知識をまとめます。

やりたいこと・知りたいこと 結論・参照先
どのディストロを選ぶか(学習・デスクトップ) Ubuntu 24.04 LTS(apt管理・情報豊富)
どのディストロを選ぶか(サーバー・RHEL互換) AlmaLinux 9(CentOS後継・2032年サポート)
インストール方式 初心者はVirtualBoxかWSL2からスタート
デュアルブート前の必須準備 BitLocker無効化・ファストスタートアップ無効化
パーティション構成(シンプル) /boot/efi + / + swap の3パーティション
インストール後の最初の作業 sudo apt update && sudo apt upgrade -y
GRUBにWindowsが出ない os-prober + update-grub で再生成
NVMe SSDが認識されない BIOSでストレージモードをAHCIに変更
Linuxのインストールは最初こそ敷居が高く感じますが、仮想環境で練習を重ねると手順が体に馴染んできます。セミナーでも「VirtualBoxで10回インストールしたら怖くなくなりました」という声をよく聞きます。まずはVirtualBoxかWSL2で試してみてください。

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宮崎 智広

この記事を書いた人

宮崎 智広(みやざき ともひろ)

株式会社イーネットマーキュリー代表。現役のLinuxサーバー管理者として15年以上の実務経験を持ち、これまでに累計3,100名以上のエンジニアを指導してきたLinux教育のプロフェッショナル。「現場で本当に使える技術」を体系的に伝えることをモットーに、実践型のLinuxセミナーの開催や無料マニュアルの配布を通じてLinux人材の育成に取り組んでいる。

趣味は、キャンプにカメラ、トラウト釣り。好きな食べ物は、ラーメンにお酒。休肝日が作れない、酒量を減らせないのが悩み。最近、ドラマ「フライトエンジェル」を観て涙腺が崩壊しました。