tcpdumpコマンドでパケットをキャプチャ・解析する方法|フィルタ指定・ファイル保存・実務活用も


この記事の監修:宮崎智広(Linux教育歴15年以上・受講者3,100名超)
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「サーバー間の通信が届いているか確認したいのに、pingだと詳細が分からない」
「接続が確立されているはずなのに、データがやり取りされていない原因を突き止めたい...」
ネットワークトラブルの調査で「パケットレベルで何が起きているか」を見たい場面は、現場では頻繁にあります。

この記事では、tcpdump コマンド の実践的な使い方を解説します。
基本的なパケットキャプチャの方法、ホスト・ポート・プロトコルを絞り込むフィルタ指定、.pcap ファイルへの保存とWiresharkでの分析連携、現場でよくある調査パターンまで、RHEL 9.4 / Ubuntu 24.04 LTS の環境で動作確認した内容をまとめました。

この記事のポイント

・tcpdump -i eth0 で指定インターフェースのパケットをキャプチャできる
・host/port/proto フィルタを組み合わせて必要な通信だけに絞り込める
・-w でファイル保存し、Wiresharkに渡して詳細分析できる
・実務では「-n -s0」を付けるのが鉄則。DNS逆引きの遅延と断片化を防ぐ


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tcpdumpとは?ネットワーク調査の基礎ツール

tcpdump は、ネットワークインターフェースを流れるパケットをリアルタイムに表示・保存するコマンドラインツールです。LinuxだけでなくmacOSや各種UNIXでも利用でき、サーバー上でインストール不要(多くの場合デフォルト)で使える点が強みです。

Wiresharkと並ぶパケット解析の定番ツールですが、GUI不要でSSH接続環境でも使えるため、サーバー管理者には必須のスキルです。

主な用途は次の通りです。

接続確認:SYN/ACKのやり取りが正常に行われているか確認する
ファイアウォール調査:パケットがサーバーに届いているかを確認する
通信内容の確認:HTTPリクエスト・DNSクエリの内容を確認する
障害原因の特定:再送・タイムアウト・RST送信の発生箇所を突き止める

tcpdumpのインストール確認

1. インストール状況の確認

多くのLinuxディストリビューションではデフォルトでインストール済みですが、念のため確認します。

# インストール確認 $ which tcpdump /usr/sbin/tcpdump $ tcpdump --version tcpdump version 4.99.3 libpcap version 1.10.3 (with TPACKET_V3) OpenSSL 3.1.1 30 May 2023

2. インストールされていない場合

# RHEL / Rocky Linux / AlmaLinux $ sudo dnf install -y tcpdump # Ubuntu / Debian $ sudo apt install -y tcpdump

基本的な使い方

1. すべてのパケットをキャプチャする(基本形)

tcpdump の基本的な実行形式です。-i でネットワークインターフェースを指定します。

# eth0インターフェースのパケットをキャプチャ $ sudo tcpdump -i eth0 # すべてのインターフェースをキャプチャ $ sudo tcpdump -i any

-i any を指定するとすべてのインターフェースを対象にしますが、大量のパケットが流れるため、後述のフィルタと組み合わせて使うのが基本です。

2. インターフェース一覧を確認する

どのインターフェースが存在するか分からない場合は -D で確認します。

# 利用可能なインターフェース一覧を表示 $ sudo tcpdump -D 1.eth0 [Up, Running, Connected] 2.lo [Up, Running, Loopback] 3.any (Pseudo-device that captures on all interfaces) [Up, Running] 4.bluetooth-monitor (Bluetooth Linux Monitor) [none] 5.nflog (Linux netfilter log (NFLOG) interface) [none]

3. 実務で必ず付けるオプション: -n と -s0

実務での tcpdump は必ず以下の2つのオプションを付けてください。

-n:ホスト名・ポート名のDNS逆引きを無効にする。逆引きのせいで出力が遅延し、パケットを見逃す原因になる
-s0 または -s 65535:パケット全体を取得する(デフォルトは68バイトで切り捨てられる)

# 推奨: 必ず -n -s0 を付ける $ sudo tcpdump -i eth0 -n -s0

フィルタを使って対象パケットに絞り込む

tcpdump の最大の強みは、BPF(Berkeley Packet Filter)という構文で対象パケットを絞り込めることです。

1. ホスト(IPアドレス)でフィルタ

特定のIPアドレスとのやり取りだけを表示します。

# 特定ホストとの通信のみ $ sudo tcpdump -i eth0 -n host 192.168.1.100 # 送信元を指定 $ sudo tcpdump -i eth0 -n src 192.168.1.100 # 送信先を指定 $ sudo tcpdump -i eth0 -n dst 192.168.1.200

2. ポート番号でフィルタ

# ポート80(HTTP)のみ $ sudo tcpdump -i eth0 -n port 80 # ポート範囲指定 $ sudo tcpdump -i eth0 -n portrange 8000-8080 # 送信先ポートを指定 $ sudo tcpdump -i eth0 -n dst port 443

3. プロトコルでフィルタ

# TCPのみ $ sudo tcpdump -i eth0 -n tcp # UDPのみ(DNSの確認など) $ sudo tcpdump -i eth0 -n udp # ICMPのみ(pingパケット) $ sudo tcpdump -i eth0 -n icmp

4. フィルタの組み合わせ(and / or / not)

複数の条件を論理演算子で組み合わせられます。

# 192.168.1.100 との tcp 443番ポートの通信 $ sudo tcpdump -i eth0 -n tcp and host 192.168.1.100 and port 443 # SSH(22番)以外のすべての通信 $ sudo tcpdump -i eth0 -n not port 22 # 特定ホストへのUDPまたはICMP $ sudo tcpdump -i eth0 -n host 8.8.8.8 and \( udp or icmp \)

キャプチャ結果の出力を読む

1. 基本的な出力形式

tcpdump の出力例を確認します。

$ sudo tcpdump -i eth0 -n port 80 tcpdump: verbose output suppressed, use -v or -vv for full protocol decode listening on eth0, link-type EN10MB (Ethernet), capture size 262144 bytes 15:23:11.482310 IP 192.168.1.102.54321 > 192.168.1.10.80: Flags [S], seq 3001234567, win 64240, options [mss 1460,sackOK,TS val 1234567 ecr 0,nop,wscale 7], length 0 15:23:11.482405 IP 192.168.1.10.80 > 192.168.1.102.54321: Flags [S.], seq 987654321, ack 3001234568, win 65535, options [mss 1460,sackOK,TS val 9876543 ecr 1234567,nop,wscale 7], length 0 15:23:11.482521 IP 192.168.1.102.54321 > 192.168.1.10.80: Flags [.], ack 987654322, win 502, length 0

出力の読み方は次の通りです。

15:23:11.482310:タイムスタンプ(マイクロ秒単位)
IP 192.168.1.102.54321 > 192.168.1.10.80:送信元IP.ポート → 送信先IP.ポート
Flags [S]:TCPフラグ。S=SYN(接続開始)、S.=SYN-ACK、.=ACK、P=PSH(データ送信)、F=FIN(切断)、R=RST(強制切断)
length 0:ペイロードのバイト数(0はヘッダのみのパケット)

2. 詳細表示(-v / -vv / -vvv)

-v を付けるとTTL・ToS・チェックサム等の詳細情報が表示されます。-vv でさらに詳細になります。

# より詳細な情報を表示 $ sudo tcpdump -i eth0 -n -v port 53 # DNS応答内容まで表示 $ sudo tcpdump -i eth0 -n -vv port 53

3. パケット内容をASCIIで表示(-A)

HTTPのリクエスト内容など、テキストベースのプロトコルを確認する際に有効です。

# パケット内容をASCIIで表示 $ sudo tcpdump -i eth0 -n -A port 80 # 例: 実際の出力(HTTP GETリクエストの場合) 15:30:22.112345 IP 192.168.1.102.55123 > 192.168.1.10.80: Flags [P.], ... ..GET /index.html HTTP/1.1 Host: www.example.com User-Agent: curl/7.81.0 Accept: */*

ファイルへの保存とWiresharkでの分析

1. パケットをファイルに保存する(-w)

-w オプションで .pcap 形式のファイルに保存できます。後からWiresharkや tcpdump -r で分析できるため、障害発生時の証拠保全にも使います。

# ファイルに保存(キャプチャはCtrl+Cで停止) $ sudo tcpdump -i eth0 -n -s0 -w /tmp/capture_$(date +%Y%m%d_%H%M%S).pcap # 特定条件でフィルタしながら保存 $ sudo tcpdump -i eth0 -n -s0 -w /tmp/http_capture.pcap port 80 # 保存完了後の確認 $ ls -lh /tmp/http_capture.pcap -rw-r--r--. 1 root root 2.3M Apr 13 15:45 /tmp/http_capture.pcap

2. 保存したファイルを読み込む(-r)

# 保存済みファイルを読み込んで表示 $ sudo tcpdump -r /tmp/http_capture.pcap -n # フィルタを使って必要なパケットだけ抽出 $ sudo tcpdump -r /tmp/http_capture.pcap -n port 80 # 行数を制限して確認 $ sudo tcpdump -r /tmp/http_capture.pcap -n -c 50

現場でよく使う調査パターン

1. 特定のIPとの接続が確立するか確認する(TCPスリーウェイハンドシェイク)

「接続はされているはずなのに応答が来ない」というトラブルで、まず確認するのがTCPのハンドシェイクです。

# サーバーへのHTTPS接続のハンドシェイクを確認 $ sudo tcpdump -i eth0 -n tcp and host 203.0.113.10 and port 443 # SYN が送られていない場合: クライアント側の問題(ルーティング・firewalld) # SYN は届いているが SYN-ACK が返らない場合: サーバー側のfirewalldかサービスが停止している可能性 # SYN-ACK の後に RST が来る場合: 接続を拒否されている(ACLや接続数制限など)

2. DNSクエリの確認

名前解決が失敗している場合、どのDNSサーバーにクエリが飛んでいるかを確認します。

# DNSクエリとレスポンスを確認 $ sudo tcpdump -i eth0 -n -vv port 53 # 実際の出力例(www.example.comへのAレコード問い合わせ) 15:40:55.234567 IP 192.168.1.102.45678 > 192.168.1.1.53: 12345+ A? www.example.com. (33) 15:40:55.235890 IP 192.168.1.1.53 > 192.168.1.102.45678: 12345 1/0/0 A 93.184.216.34 (49)

「クエリが飛んでいるのに応答がない」「別のDNSサーバーに問い合わせている」といった問題をパケットレベルで特定できます。

3. 一定時間だけキャプチャして自動停止する

長時間キャプチャをかけておく場合、件数制限や時間制限を組み合わせます。

# 100パケット取得したら自動停止 $ sudo tcpdump -i eth0 -n -c 100 -w /tmp/sample.pcap # 30秒間だけキャプチャ(timeout コマンドと組み合わせ) $ sudo timeout 30 tcpdump -i eth0 -n -s0 -w /tmp/capture_30sec.pcap

トラブルシュート・よくあるエラー

「tcpdump: eth0: No such device exists」と表示される

指定したインターフェース名が間違っています。tcpdump -D または ip link コマンドで正しいインターフェース名を確認してください。RHEL 9 系では eth0 ではなく ens192ens3 のような名前になっている場合があります。

「tcpdump: listen: SIOCSIFFLAGS: Operation not permitted」と表示される

root権限がありません。sudo tcpdump で実行するか、root ユーザーに切り替えてください。

出力が表示されない

対象のインターフェースにパケットが流れていないか、フィルタが厳しすぎる可能性があります。まず tcpdump -i any でフィルタなしで試し、パケットが流れていることを確認してから条件を絞り込んでください。

TCPフラグの読み方


フラグ表記 意味 よく見るシーン
[S] SYN(接続開始要求) クライアントが接続を開始するとき
[S.] SYN-ACK(接続受け入れ) サーバーが接続を受け入れるとき
[.] ACK(確認応答) データ受信の確認
[P.] PSH-ACK(データ送信) アプリケーションデータが送られるとき
[F.] FIN-ACK(切断開始) 正常な接続終了
[R.] RST-ACK(強制切断) 接続拒否・異常終了のとき

本記事のまとめ


やりたいこと コマンド
指定インターフェースをキャプチャ sudo tcpdump -i eth0 -n -s0
特定ホストとの通信だけ表示 sudo tcpdump -i eth0 -n host 192.168.1.100
ポート番号でフィルタ sudo tcpdump -i eth0 -n port 443
TCP/UDP/ICMPで絞り込む sudo tcpdump -i eth0 -n tcp
複数条件を組み合わせる sudo tcpdump -i eth0 -n host 1.2.3.4 and port 80
内容をASCIIで表示 sudo tcpdump -i eth0 -n -A port 80
ファイルに保存 sudo tcpdump -i eth0 -n -s0 -w /tmp/cap.pcap
保存ファイルを読み込む sudo tcpdump -r /tmp/cap.pcap -n
100件取得で自動停止 sudo tcpdump -i eth0 -n -c 100

tcpdump はインストールされているサーバーであればGUI不要でパケットレベルの調査ができます。「pingは通るのに接続できない」「DNSが応答しない」といったトラブルで、まず実行する習慣をつけると障害対応のスピードが大きく変わります。

Linuxのネットワーク調査コマンドとして、ssiplsof とあわせて覚えておくと、現場での対応力が一段と上がります。

Linuxのネットワーク調査では tcpdump と合わせて、ssコマンドipコマンド も活用すると、より多角的な障害対応が可能になります。

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宮崎 智広

この記事を書いた人

宮崎 智広(みやざき ともひろ)

株式会社イーネットマーキュリー代表。現役のLinuxサーバー管理者として15年以上の実務経験を持ち、これまでに累計3,100名以上のエンジニアを指導してきたLinux教育のプロフェッショナル。「現場で本当に使える技術」を体系的に伝えることをモットーに、実践型のLinuxセミナーの開催や無料マニュアルの配布を通じてLinux人材の育成に取り組んでいる。

趣味は、キャンプにカメラ、トラウト釣り。好きな食べ物は、ラーメンにお酒。休肝日が作れない、酒量を減らせないのが悩み。最近、ドラマ「フライトエンジェル」を観て涙腺が崩壊しました。