「チームメンバーのUbuntuバージョンが違うせいで、同じ手順を実行しても動かない」
そんな悩みを抱えるインフラエンジニアやサーバー管理者は少なくない。Ollamaは単体でも動作するが、本番運用を見据えるとDockerコンテナ化が断然有利だ。この記事では、docker-compose.ymlを使ってOllamaをコンテナとして立ち上げ、GPUパススルー設定・リソース制限・Open WebUI連携・ヘルスチェック・日常運用コマンドまでをステップ順に解説する。さらに、profilesキーを使ったサービスの選択起動とdocker-compose.override.ymlを活用した開発・本番・CI設定の分離パターン、マージルールの落とし穴まで詳しく紹介する。Ubuntu Server 22.04 LTS + NVIDIA GPUの構成を基本とするが、GPUなしのCPU運用でも手順はほぼ同じだ。
この記事のポイント
・docker-compose.ymlとNVIDIA Container Toolkitで再現性のある運用環境を構築できる
・GPUパススルー・ヘルスチェック・環境変数の外部化で本番品質の構成に仕上げる手順を解説
・profilesキーで特定サービスを選択起動し、COMPOSE_PROFILES変数で環境ごとに制御できる
・docker-compose.override.ymlで開発・本番設定を分離し、本番への誤設定混入を防ぐ方法も紹介
・--env-fileオプションで本番用の.envを明示指定し環境変数を切り替える手順を解説
・compose.ci.ymlと--abort-on-container-exitでCIテスト実行を自動化する手順も解説
・マージルールの落とし穴(配列は追加マージ・マッピングはキー単位上書き)を理解して設定混入を防ぐ
・deploy.resources.limitsでCPU/メモリを制限し、ホスト全体の安定性を守る方法も紹介
・docker statsで実消費量を把握してから制限値を設定する手順を解説
・Open WebUIをcomposeに同梱することでチーム共有UIをワンコマンドで起動できる
でも安心してください。プロのエンジニアはコマンドを暗記していません。
「現場で使える型」を効率よく使いこなしているだけです。
なぜOllamaをDockerコンテナで動かすべきなのか
ローカルLLMの導入を検討するとき、「まずサーバーに直接インストールしてみる」というアプローチを取る人が多い。実際、Ubuntu ServerでローカルLLMを構築する方法で解説した手順は確かに手早く動作確認できる。ただし、直接インストールには「ライブラリの競合」「Pythonバージョン依存」「移行コスト」という3つの問題が伴う。Dockerを使うと、これらの問題が構造的に解消される。コンテナはホストOSのライブラリに依存せず、docker-compose.ymlという1ファイルで全構成が記述される。チームメンバーがそのファイルを手元に持てば、同じ環境を数分で再現できる。バージョン管理リポジトリにcomposeファイルをコミットすれば、構成変更の履歴も自動で残る。
また、デフォルト設定のDockerコンテナはホストマシンのCPUとメモリを上限なく消費できる。Ollamaが大量の推論リクエストを受けたとき、同じホスト上の他のサービスが道連れになるケースが現場でよく見られる。docker-compose.ymlにリソース制限を明記しておくことで、こうした問題を事前に防げる。
現場で聞いた話では、検証段階は直接インストールで済ませ、社内展開フェーズでDockerに移行するケースが増えているという。直接インストール版とコンテナ版の主な違いは次のとおりだ。
直接インストール版はセットアップが速い半面、サーバー移行時に「どのバージョンを入れたか」が曖昧になりやすい。一方、Docker版はcomposeファイルが設計書として機能するため、「3ヶ月前の構成をそのまま再現したい」といった場面で威力を発揮する。チームで複数台のサーバーにOllamaを展開する予定があるなら、最初からDockerで構築する価値は高い。
この記事ではその「本番化」のステップを詳しく見ていく。
事前準備|Docker EngineとNVIDIA Container Toolkitを整える
1. Docker Engineのインストール確認
Ubuntu ServerへのDocker Engineのインストールは公式ドキュメントの手順が最も確実だ。既にインストール済みの場合はバージョン確認だけ行う。# Dockerのバージョン確認 $ docker --version Docker version 26.1.4, build 5650f9b # docker compose plugin(V2)の確認 $ docker compose version Docker Compose version v2.27.1
# docker compose plugin(V2)の追加インストール $ sudo apt update $ sudo apt install -y docker-compose-plugin # 一般ユーザーでdockerコマンドを使えるようにグループ追加 $ sudo usermod -aG docker $USER # グループ変更を反映(再ログインが必要) $ newgrp docker
2. NVIDIA Container Toolkitのインストール
GPUを使ってOllamaを動かすには、NVIDIA Container Toolkitが必要だ。これはDockerコンテナからGPUにアクセスするためのランタイムで、ホストOS側にインストールする。CUDAドライバーが既にインストール済みであることを前提とする( コマンドで確認できる。未導入の場合はUbuntu ServerでGPUを使ってローカルLLMを動かす方法を参照してほしい)。
# NVIDIA Container Toolkitのリポジトリ追加 $ curl -fsSL https://nvidia.github.io/libnvidia-container/gpgkey | sudo gpg --dearmor -o /usr/share/keyrings/nvidia-container-toolkit-keyring.gpg $ curl -s -L https://nvidia.github.io/libnvidia-container/stable/deb/nvidia-container-toolkit.list | sed 's#deb https://#deb [signed-by=/usr/share/keyrings/nvidia-container-toolkit-keyring.gpg] https://#g' | sudo tee /etc/apt/sources.list.d/nvidia-container-toolkit.list $ sudo apt update && sudo apt install -y nvidia-container-toolkit # Dockerランタイムへの登録 $ sudo nvidia-ctk runtime configure --runtime=docker $ sudo systemctl restart docker # 動作確認(コンテナ内でnvidia-smiが正常に動けばOK) $ docker run --rm --runtime=nvidia --gpus all ubuntu nvidia-smi
3. 作業ディレクトリの構成を整える
作業用ディレクトリを作成する。モデルファイルは数GB以上になるため、ストレージ容量が十分なパスに配置する。# 作業ディレクトリを作成 $ mkdir -p ~/ollama-docker/{models,webui-data} $ cd ~/ollama-docker # ディレクトリ構成の確認 $ ls -la drwxr-xr-x 4 ubuntu ubuntu 4096 Jun 28 10:00 . drwxr-xr-x 12 ubuntu ubuntu 4096 Jun 28 10:00 .. drwxr-xr-x 2 ubuntu ubuntu 4096 Jun 28 10:00 models drwxr-xr-x 2 ubuntu ubuntu 4096 Jun 28 10:00 webui-data
Ollamaコンテナを最小構成で起動する方法
1. 最小構成のdocker-compose.ymlを作成する
まずシンプルな1サービス構成から始めて動作を確認する。 ディレクトリに以下の内容でdocker-compose.ymlを作成する。# ~/ollama-docker/docker-compose.yml(最小構成) services: ollama: image: ollama/ollama:latest container_name: ollama restart: unless-stopped ports: - "11434:11434" volumes: - ./models:/root/.ollama deploy: resources: reservations: devices: - driver: nvidia count: all capabilities: [gpu]
GPUを使わないCPUのみの環境では ブロック全体を削除する。CPU運用でも動作するが、推論速度はGPUに比べて大幅に遅くなる(トークン生成速度が10分の1以下になることもある)。
2. コンテナを起動してモデルを取得する
# コンテナをバックグラウンドで起動 $ docker compose up -d # 起動確認(STATUSがUpになればOK) $ docker compose ps NAME IMAGE COMMAND SERVICE CREATED STATUS PORTS ollama ollama/ollama:latest "/bin/ollama serve" ollama 5 seconds ago Up 4 seconds 0.0.0.0:11434->11434/tcp # モデルの取得(コンテナ内でollama pullを実行) $ docker exec -it ollama ollama pull llama3.3:8b-instruct-q4_0 # テスト推論(APIが正常に応答するか確認) $ curl http://localhost:11434/api/generate -d '{"model":"llama3.3:8b-instruct-q4_0","prompt":"こんにちは","stream":false}'
docker-compose.ymlで本番構成に仕上げる
1. 環境変数による設定の外部化
本番環境では、設定値を ファイルに切り出してdocker-compose.ymlから参照する構成が保守しやすい。チームで設定を共有しつつ、サーバーごとの差分は だけ変更すれば済む。# ~/ollama-docker/.env OLLAMA_HOST=0.0.0.0 OLLAMA_MAX_LOADED_MODELS=2 OLLAMA_NUM_PARALLEL=4 OLLAMA_KEEP_ALIVE=30m
# docker-compose.yml(環境変数追加版) services: ollama: image: ollama/ollama:latest container_name: ollama restart: unless-stopped ports: - "11434:11434" volumes: - ./models:/root/.ollama environment: - OLLAMA_HOST=${OLLAMA_HOST:-0.0.0.0} - OLLAMA_MAX_LOADED_MODELS=${OLLAMA_MAX_LOADED_MODELS:-1} - OLLAMA_NUM_PARALLEL=${OLLAMA_NUM_PARALLEL:-2} - OLLAMA_KEEP_ALIVE=${OLLAMA_KEEP_ALIVE:-10m} deploy: resources: reservations: devices: - driver: nvidia count: all capabilities: [gpu]
また、本番環境で「必須パラメータが未設定のまま起動してしまう」事故を防ぐには の形式が有効だ。たとえば と書いておくと、 に値がない場合にコンテナが起動せずエラーで止まる。機密情報やパスの設定ミスを早期に発見できる。
はVRAMに同時に展開するモデルの上限数だ。VRAM 8GBの環境では に絞ることを推奨する。 はモデルをVRAMに保持する時間で、頻繁にリクエストが来る環境では長めに設定するとレスポンスが速くなる。設定変更後は で再起動すれば反映される。
2. ヘルスチェックの追加で本番品質に仕上げる
本番環境ではコンテナのヘルスチェックを設定しておく。サービスが応答しなくなったときに自動検知でき、後述するOpen WebUI連携の起動順制御にも使える。# docker-compose.yml(ヘルスチェック追加版) services: ollama: image: ollama/ollama:latest container_name: ollama restart: unless-stopped ports: - "11434:11434" volumes: - ./models:/root/.ollama environment: - OLLAMA_HOST=${OLLAMA_HOST:-0.0.0.0} - OLLAMA_MAX_LOADED_MODELS=${OLLAMA_MAX_LOADED_MODELS:-1} - OLLAMA_KEEP_ALIVE=${OLLAMA_KEEP_ALIVE:-10m} healthcheck: test: ["CMD", "curl", "-f", "http://localhost:11434/"] interval: 30s timeout: 10s retries: 3 start_period: 30s deploy: resources: reservations: devices: - driver: nvidia count: all capabilities: [gpu]
3. CPUとメモリの制限でOllamaコンテナを安定稼働させる
デフォルト設定のDockerコンテナは、ホストマシンのCPUとメモリを上限なく消費できる。OllamaがGPUで推論しているときでも、モデルのロード処理や並列リクエスト処理でホストCPUとメモリを大量に使うことがある。 で上限を設けておくことで、ホスト全体の安定性を守れる。注意: によるCPU・メモリ制限はGPUパススルー()と同一の ブロックに共存できる。
# docker-compose.yml(リソース制限追加版) services: ollama: image: ollama/ollama:latest container_name: ollama restart: unless-stopped ports: - "11434:11434" volumes: - ./models:/root/.ollama environment: - OLLAMA_HOST=${OLLAMA_HOST:-0.0.0.0} - OLLAMA_MAX_LOADED_MODELS=${OLLAMA_MAX_LOADED_MODELS:-1} - OLLAMA_KEEP_ALIVE=${OLLAMA_KEEP_ALIVE:-10m} healthcheck: test: ["CMD", "curl", "-f", "http://localhost:11434/"] interval: 30s timeout: 10s retries: 3 start_period: 30s deploy: resources: limits: cpus: '4.00' memory: 16G reservations: cpus: '1.00' memory: 4G devices: - driver: nvidia count: all capabilities: [gpu]
設定後に を実行して制限値が反映されているか確認できる。
4. docker-compose.override.ymlで開発・本番設定を分離する
Ollamaを本番に展開するとき、「開発中はデバッグログを有効にしていたのに本番でもそのままだった」「検証機ではAPIポートをホストに直接公開していたが本番では閉じるべきだった」という設定混入は現場でよく起きる。こうしたミスを構造的に防ぐのが docker-compose.override.yml を使った環境別設定の分離だ。を実行すると、DockerはカレントディレクトリのComposeファイルを2段階で読み込む。まず (共通ベース定義)を読み込み、次に が存在すれば自動的にマージする。このoverride.ymlに開発専用設定を切り出すことで、本番へのデプロイ時に開発設定が混入しなくなる。
ディレクトリ構成のイメージは次のとおりだ。
# 推奨ディレクトリ構成 ~/ollama-docker/ ├── docker-compose.yml # ベース設定(全環境共通) ├── docker-compose.override.yml # 開発用追加設定(docker compose upで自動マージ) ├── compose.prod.yml # 本番用設定(-fで明示指定) ├── compose.ci.yml # CI用設定(-fで明示指定) ├── .env # 環境変数(.gitignoreに追加必須) ├── .env.example # .envの雛形(gitにコミットする) └── .env.prod # 本番用環境変数(本番サーバーのみに配置)
# docker-compose.override.yml(開発環境専用の設定。本番には含めない) services: ollama: environment: - OLLAMA_DEBUG=1 # デバッグログを有効化(開発時のみ) - OLLAMA_KEEP_ALIVE=5m # VRAMを早めに解放して他の作業と共存させる ports: - "11434:11434" # 開発機からAPIを直接叩けるようにホスト公開 deploy: resources: limits: cpus: '2.00' # 開発機なので本番より緩い上限 memory: 8G
# 本番デプロイ(override.ymlを読ませない) $ docker compose -f docker-compose.yml -f compose.prod.yml up -d # mergeされた最終設定を事前確認(デプロイ前の必須チェック) $ docker compose -f docker-compose.yml -f compose.prod.yml config | grep -A10 environment # 開発環境での起動(override.ymlが自動適用される) $ docker compose up -d
compose.prod.ymlには本番特有の設定(固定タグのイメージ、strictなリソース制限、restart設定など)をまとめる。本番パスワードを直書きしたファイルは に必ず追加すること。
本番環境で とは別の を使いたい場合は で明示指定できる。これにより、開発用の ( 管理)と本番用の (本番サーバーのみに配置)を完全に分離できる。
# 本番用の.envファイルを明示指定して起動する $ docker compose --env-file .env.prod -f docker-compose.yml -f compose.prod.yml up -d # .env.prodの例(本番サーバーのみに配置・gitignoreに追加する) OLLAMA_HOST=0.0.0.0 OLLAMA_MAX_LOADED_MODELS=3 OLLAMA_NUM_PARALLEL=8 OLLAMA_KEEP_ALIVE=60m
5. profilesでモニタリング・デバッグサービスを選択起動する
override.ymlが「設定の上書き」を担うのに対し、 は「サービスの選択起動」を担う。Ollamaと同じcomposeにGPUメトリクス収集ツールや管理用コンテナを定義しておき、開発・監視時だけ有効にしたい場合に有効だ。キーを付けたサービスはデフォルトで起動しない。 オプションまたは 環境変数で明示的に指定したときのみ起動する。
# docker-compose.yml(profiles付きモニタリングサービスを追加した例) services: ollama: image: ollama/ollama:latest container_name: ollama restart: unless-stopped ports: - "11434:11434" volumes: - ./models:/root/.ollama # 監視時だけ起動するサービスの例(GPUメトリクス収集) dcgm-exporter: image: nvcr.io/nvidia/k8s/dcgm-exporter:3.3.9-3.6.0-ubuntu22.04 profiles: - monitoring ports: - "9400:9400" deploy: resources: reservations: devices: - driver: nvidia count: all capabilities: [gpu]
# 通常起動(dcgm-exporterは起動しない) $ docker compose up -d $ docker compose ps NAME IMAGE STATUS ollama ollama/ollama:latest Up (healthy) # monitoringプロファイルを指定してGPUメトリクス収集も起動 $ docker compose --profile monitoring up -d $ docker compose --profile monitoring ps NAME IMAGE STATUS ollama ollama/ollama:latest Up (healthy) dcgm-exporter nvcr.io/nvidia/k8s/dcgm-exporter:... Up
# .env(監視環境用) COMPOSE_PROFILES=monitoring # .envが読み込まれた状態では通常どおりdocker compose up -dを実行するだけでOK $ docker compose up -d # 本番環境の.envではCOMPOSE_PROFILESを書かないか空にする # COMPOSE_PROFILES= # 複数プロファイルを同時に有効にする場合はカンマ区切り # COMPOSE_PROFILES=monitoring,debug
起動対象サービスを確認するには が便利だ。profilesを指定した場合とそうでない場合の違いをデプロイ前に検証できる。
# プロファイルなしで起動されるサービスを確認 $ docker compose config --services ollama open-webui # monitoringプロファイル指定時に追加されるサービスを確認 $ docker compose --profile monitoring config --services ollama open-webui dcgm-exporter
6. compose.ci.ymlでCI環境のテスト実行を自動化する
override.ymlが開発専用設定の切り出しを担い、compose.prod.ymlが本番設定を担うのと同様に、CI環境(GitHub ActionsやJenkins等)専用の設定を compose.ci.yml に切り出すと、テスト実行の構成が明確になる。CI環境では、バインドマウントを使わず(イメージ内にコードを含める)、ポートも公開せず、テスト実行に特化した構成にするのが原則だ。こうすることで、CI実行環境に依存しない再現性の高いテストが実現できる。
# compose.ci.yml(CI環境専用設定) services: ollama: image: ollama/ollama:latest container_name: ollama-ci environment: - OLLAMA_HOST=0.0.0.0 - OLLAMA_KEEP_ALIVE=5m # CIでは早めに解放して次のジョブに備える deploy: resources: reservations: devices: - driver: nvidia count: all capabilities: [gpu]
# CI実行(いずれかのコンテナが終了した時点で他も停止する) $ docker compose -f docker-compose.yml -f compose.ci.yml up --abort-on-container-exit # GitHub Actionsからの呼び出し例(.github/workflows/test.yml) # - name: Run tests # run: | # docker compose -f docker-compose.yml -f compose.ci.yml up # --abort-on-container-exit # --exit-code-from ollama # デプロイ前の設定検証(CI/CDパイプラインに組み込む) # 合成が成功すれば終了コード0を返す(YAML構文エラーや変数欠落は非0で止まる) $ docker compose -f docker-compose.yml -f compose.ci.yml config --quiet
は合成に成功したとき出力を抑止して終了コード0を返す。CI/CDパイプラインの「デプロイ前ゲート」として組み込んでおくと、設定ファイルの構文エラーや 形式で必須指定した環境変数の欠落を自動検出できる。本番デプロイのジョブが始まる前に を挟むだけで、設定ミスによる本番障害を未然に防げる。
docker-compose.override.ymlのマージルールと落とし穴
override.ymlを使い始めると、「設定を書いたはずなのに反映されない」「ポートが二重に公開されてしまった」というトラブルに出くわすことがある。原因はDockerのマージ動作への理解不足だ。設定の種類によってマージ動作が異なるため、事前に整理しておきたい。1. マッピング(environment・labels)はキー単位の上書きマージ
や のような「キー: 値」形式のマッピングは、同じキーが存在すれば後から読んだファイルの値で上書きされ、新しいキーは追加される。削除はできない。# docker-compose.yml(ベース) services: ollama: environment: - OLLAMA_HOST=0.0.0.0 - OLLAMA_KEEP_ALIVE=10m # docker-compose.override.yml(開発用) services: ollama: environment: - OLLAMA_KEEP_ALIVE=5m # 上書き(10mをここで置き換える) - OLLAMA_DEBUG=1 # 追加(ベースにはないキー) # docker compose configで確認したマージ結果 services: ollama: environment: OLLAMA_HOST: 0.0.0.0 # ベースの値がそのまま残る OLLAMA_KEEP_ALIVE: 5m # override.ymlの値で上書きされた OLLAMA_DEBUG: "1" # override.ymlで追加された
2. 配列(ports・volumes)は追加マージになる
、、 のような配列形式の設定は、ベースファイルの内容に追加される。上書き(置き換え)にはならない。この動作が予期しないポートの二重公開につながることがある。# docker-compose.yml(ベース) services: ollama: ports: - "11434:11434" # docker-compose.override.yml(開発用 ── 別ポートを追加しようとした) services: ollama: ports: - "11435:11434" # 追加マージ(置き換えではない!) # マージ結果(docker compose configで確認) services: ollama: ports: - "11434:11434" # ベースの設定がそのまま残る - "11435:11434" # override.ymlで追加された # 両方のポートが公開された状態になる
3. portsの競合を防ぐ|ベースはexposeのみ記述する設計
ポートの追加マージ問題を構造的に解消するには、ベースファイルのサービス定義に を書かず、 のみ記述する設計が有効だ。 はコンテナ間通信(サービスディスカバリ)のためのポート宣言で、ホストにはポートを公開しない。ホストへのポート公開は各環境ファイルで担う。# docker-compose.yml(ベース ── portsではなくexposeのみ記述) services: ollama: image: ollama/ollama:latest container_name: ollama restart: unless-stopped expose: - "11434" # コンテナ間通信のみ(ホストへは公開しない) volumes: - ./models:/root/.ollama environment: - OLLAMA_HOST=${OLLAMA_HOST:-0.0.0.0} - OLLAMA_MAX_LOADED_MODELS=${OLLAMA_MAX_LOADED_MODELS:-1} - OLLAMA_KEEP_ALIVE=${OLLAMA_KEEP_ALIVE:-10m} healthcheck: test: ["CMD", "curl", "-f", "http://localhost:11434/"] interval: 30s timeout: 10s retries: 3 start_period: 30s deploy: resources: limits: cpus: '4.00' memory: 16G reservations: cpus: '1.00' memory: 4G devices: - driver: nvidia count: all capabilities: [gpu] # docker-compose.override.yml(開発環境 ── ポートを追加) services: ollama: ports: - "11434:11434" # 開発機から直接アクセスするためにホスト公開 # compose.prod.yml(本番 ── ポートをリバースプロキシ経由にする場合は不要) services: ollama: ports: - "127.0.0.1:11434:11434" # ループバックのみ(Nginx等から内部転送)
Open WebUIを同一composeに追加してチームで使う
1. docker-compose.ymlにOpen WebUIサービスを追加する
OllamaにOpen WebUIを導入する方法でも紹介したOpen WebUIは、同じdocker-composeファイルで一元管理できる。以下の サービスブロックを追加する。# docker-compose.yml(Ollama + Open WebUI完成構成) services: ollama: image: ollama/ollama:latest container_name: ollama restart: unless-stopped volumes: - ./models:/root/.ollama environment: - OLLAMA_HOST=0.0.0.0 - OLLAMA_MAX_LOADED_MODELS=${OLLAMA_MAX_LOADED_MODELS:-1} - OLLAMA_KEEP_ALIVE=${OLLAMA_KEEP_ALIVE:-10m} healthcheck: test: ["CMD", "curl", "-f", "http://localhost:11434/"] interval: 30s timeout: 10s retries: 3 start_period: 30s deploy: resources: limits: cpus: '4.00' memory: 16G reservations: cpus: '1.00' memory: 4G devices: - driver: nvidia count: all capabilities: [gpu] open-webui: image: ghcr.io/open-webui/open-webui:main container_name: open-webui restart: unless-stopped ports: - "3000:8080" volumes: - ./webui-data:/app/backend/data environment: - OLLAMA_BASE_URL=http://ollama:11434 depends_on: ollama: condition: service_healthy
に を指定することで、Ollamaのヘルスチェックが通過してからOpen WebUIが起動する。起動順の依存を明示的に制御でき、「OllamaがまだAPIを受け付けていないのにOpen WebUIが先に起動してしまう」という問題を防げる。
2. 起動と動作確認
# 全サービスをまとめて起動 $ docker compose up -d # 全サービスのステータス確認 $ docker compose ps NAME IMAGE STATUS ollama ollama/ollama:latest Up (healthy) open-webui ghcr.io/open-webui/open-webui:main Up # Open WebUIのポートでアクセスできるか確認 $ curl -s -o /dev/null -w "%{http_code}" http://localhost:3000/ 200
チームメンバーに共有する際はサーバーのIPアドレスとポート3000を伝えるだけでいい。composeファイルをgitで管理しておけば、新規サーバーへの展開も + の2コマンドで完了する。社内でChatGPTが使えない環境でのローカルLLM活用の背景については、社内でChatGPTが使えないときの代替手段も参照してほしい。
コンテナの日常運用|ログ監視・モデル更新・バックアップ
1. ログの確認方法
# 全サービスのログをリアルタイムで確認 $ docker compose logs -f # Ollamaのログのみ確認(推論状況・エラーはここで把握) $ docker compose logs -f ollama # 過去100行のみ表示 $ docker compose logs --tail=100 ollama # タイムスタンプ付きで表示 $ docker compose logs -f --timestamps ollama
2. モデルの追加・更新手順
# 新しいモデルを追加取得 $ docker exec -it ollama ollama pull mistral:7b-instruct-q8_0 # 現在取得済みのモデル一覧(SIZE列でストレージ使用量を確認) $ docker exec -it ollama ollama list NAME ID SIZE MODIFIED llama3.3:8b-instruct-q4_0 abc123def456 4.9 GB 2 days ago mistral:7b-instruct-q8_0 def456abc789 7.7 GB 1 minute ago # 不要なモデルの削除(ストレージ解放) $ docker exec -it ollama ollama rm phi-4:latest # Ollamaイメージ自体を最新版にアップデート $ docker compose pull ollama $ docker compose up -d ollama
3. バックアップと別サーバーへの移行
composeファイルをgitで管理するのがベストプラクティスだ。モデルデータはOllamaの公式リポジトリから再ダウンロードできるため、基本的にバックアップは不要だ。ただし帯域・時間コストを節約したいなら、 をそのまま別サーバーへ転送できる。# composeファイルをgitで管理(.envはgitignoreに追加する) $ git init $ echo ".env" >> .gitignore $ git add docker-compose.yml .gitignore $ git commit -m "initial ollama docker setup" # モデルデータを別サーバーへrsyncで転送(大容量のため時間がかかる) $ rsync -avz --progress ./models/ user@new-server:~/ollama-docker/models/ # 移行先でcomposeを起動するだけで環境が復元される # (モデルを再ダウンロードする必要がない)
OllamaのREST APIを業務システムに組み込む方法で解説したAPI連携を行う場合、この構成のポート11434をそのまま利用できる。
4. docker statsでリソース消費をリアルタイム監視する
本番運用では、制限値を設定する前に実際のリソース消費量を計測することが重要だ。根拠のない数値で上限を設けると、Ollamaがメモリ不足で落ちたり、逆に制限が緩すぎて他のサービスに影響が出たりする。 で実消費量を把握してから制限値を決めるのが現場での鉄則だ。# 全コンテナのリソース使用量をリアルタイム表示 $ docker stats # 実行結果(例) CONTAINER ID NAME CPU % MEM USAGE / LIMIT MEM % NET I/O BLOCK I/O a1b2c3d4e5f6 ollama 12.5% 6.8GiB / 16.0GiB 42.5% 8.2kB / 2.1kB 42MB / 120MB 7890abcdef12 open-webui 0.80% 128.3MiB / 16.0GiB 0.8% 1.2kB / 0.8kB 0B / 4.1MB # 1回だけ出力して終了(シェルスクリプトや定期確認に便利) $ docker stats --no-stream
・CPU %: 直近の瞬間CPU使用率(ホスト全体に対する割合)
・MEM USAGE / LIMIT: 現在のメモリ使用量 / 設定上限(制限なしならホストの全メモリが表示される)
・MEM %: 設定上限に対する使用率
・NET I/O: コンテナのネットワーク送受信量
・BLOCK I/O: ディスクI/O量
負荷試験を実施したときのピーク MEM USAGE を確認し、その1.5倍程度を の値として設定するのが目安だ。Ollamaは推論中だけでなくモデルのロード直後にもメモリを大量消費するため、モデルを切り替えながら計測することを推奨する。
よくあるトラブルと対処法
Dockerを使ったOllama運用でよく遭遇するトラブルとその対処をまとめる。「Error response from daemon: could not select device driver "" with capabilities: [[gpu]]」
NVIDIA Container Toolkitが正しくDockerに登録されていない。 を再実行し、 でDockerを再起動する。それでも解消しない場合は に が追記されているか確認する。
「open-webuiが "Failed to connect to Ollama" と表示される」
が になっている場合に発生する。コンテナ間通信では はそれぞれのコンテナ自身を指すため、Ollamaには届かない。(コンテナ名)に変更して で再起動する。
「GPUが認識されているのに推論が遅い」
VRAM不足でモデルが自動的にCPUにオフロードされている可能性がある。 でログを確認し、「offloading N layers to CPU」のメッセージがあればモデルが大きすぎる。量子化レベルを に下げるか、より小さいパラメータ数のモデルを選ぶ。
「docker compose up -d が "no space left on device" で失敗する」
モデルファイルがディスクを埋めている。Filesystem Size Used Avail Use% Mounted on tmpfs 794M 7.4M 787M 1% /run /dev/mmcblk0p2 113G 59G 50G 55% / tmpfs 3.9G 0 3.9G 0% /dev/shm tmpfs 5.0M 0 5.0M 0% /run/lock /dev/mmcblk0p1 505M 188M 317M 38% /boot/firmware /dev/sda1 1.8T 297G 1.4T 18% /mnt/hdd tmpfs 794M 44K 794M 1% /run/user/1000 でパーティション使用率を確認し、不要なモデルを で削除する。 ディレクトリは で容量を確認できる。
「モデルのダウンロード中にコンテナが停止する」
ネットワークタイムアウトまたはメモリ不足が原因なことが多い。 を再実行すると途中から再開される。ホストのメモリ使用状況は total used free shared buff/cache available Mem: 7.8Gi 1.7Gi 141Mi 324Ki 6.1Gi 6.1Gi Swap: 4.0Gi 791Mi 3.2Gi で確認する。
「Ollamaコンテナが突然停止してdocker compose psでExited (137)と表示される」
カーネルのOOM Killerによってプロセスが強制終了されている可能性が高い。次のコマンドで原因を確認する。
# OOM Killerで落ちたか確認する $ docker inspect ollama --format '{{.State.OOMKilled}} {{.State.ExitCode}}' # OOM Killedの場合の出力 true 137 # OOMKilled=true、ExitCode=137(SIGKILL)はメモリ上限超過を意味する # ホスト側のOOMログも確認する $ dmesg | grep -i 'oom\|killed'
「docker compose up -d 後にopen-webuiが起動しない」
Ollamaのヘルスチェックに時間がかかりタイムアウトしている場合がある。 を に延長する。また でOllamaのSTATUSが のままになっていないか確認する。
「override.ymlを変更したのに設定が反映されない」
だけでは設定変更が反映されないことがある。environmentやvolumesの変更はコンテナの再作成が必要だ。次のどちらかで対応する。
# コンテナを停止・削除してから再起動する(確実な方法) $ docker compose down $ docker compose up -d # --force-recreateで強制的にコンテナを再作成する(ボリュームは保持される) $ docker compose up -d --force-recreate # 反映されているかどうかはdocker compose configで事前確認できる $ docker compose config | grep -A5 environment
を1つでも指定した場合、 も で明示しなければ予期しない動作をすることがある。(ベースファイルを省略)ではなく、 と両方指定する。 でmerge結果を事前確認するのが確実だ。
「ports配列を上書きしたつもりが二重に公開されてしまった」
・・ のような配列形式の設定は上書きではなく追加マージになる。ベースファイルに と書いた状態でoverride.ymlにも を書くと、両方のポートが公開された状態になる。ベースファイルの を削除して のみを残し、ポート公開は各環境ファイルで定義する設計に変えることで解消できる。
「必須の環境変数が未設定のまま起動してしまった」
に値を書き忘れた場合、 と書いていると空文字として起動してしまう。 の形式にすると、値が未設定の場合にコンテナが起動せずエラーで止まる。接続先DBのパスワードやAPIキーなど、欠けると致命的な設定には を付けておくことを推奨する。
「profilesを指定してもサービスが起動しない」
profilesキーの値と オプションの文字列が一致しているか確認する。大文字・小文字が区別されるため、docker-compose.ymlに と書いて と指定しても一致しない。次のコマンドで起動対象サービスを事前に検証する。
# プロファイルなしで起動されるサービスを確認 $ docker compose config --services # monitoringプロファイル指定時に起動されるサービスを確認 $ docker compose --profile monitoring config --services # COMPOSE_PROFILESが意図しない値になっていないか確認する $ echo $COMPOSE_PROFILES $ cat .env | grep COMPOSE_PROFILES
オプションはYAML構文エラーと 形式の必須変数欠落を検出するが、設定値の論理的な正当性(ポート番号の重複・存在しないイメージ名など)までは確認しない。デプロイ前のゲートとして有効だが、(quietなし)で出力されたYAMLを目視確認する手順もあわせて運用に組み込むことを推奨する。
まとめ
この記事では、OllamaをDockerコンテナで運用するための手順をステップ順に解説した。直接インストールよりも手順は増えるが、一度docker-compose.ymlを整えてしまえば環境の再現・チーム展開・バージョン管理が格段に楽になる。| ステップ | やること | 主要コマンド |
|---|---|---|
| 事前準備 | Docker Engine / NVIDIA Container Toolkit導入 | sudo apt install nvidia-container-toolkit |
| 最小起動 | docker-compose.ymlでOllamaを定義・起動 | docker compose up -d |
| モデル取得 | コンテナ内でollama pullを実行 | docker exec -it ollama ollama pull llama3.3:8b-instruct-q4_0 |
| 本番化 | 環境変数外部化・ヘルスチェック追加 | docker compose up -d(compose修正後) |
| リソース制限 | deploy.resources.limitsでCPU/メモリ上限を設定 | docker stats --no-streamで実消費量を確認後に設定 |
| 設定分離 | override.ymlで開発・本番設定を切り分ける | docker compose -f docker-compose.yml -f compose.prod.yml up -d |
| 本番環境変数 | --env-fileで本番用.envを明示指定する | docker compose --env-file .env.prod -f docker-compose.yml -f compose.prod.yml up -d |
| CI自動化 | compose.ci.ymlでCIテスト実行を自動化する | docker compose -f docker-compose.yml -f compose.ci.yml up --abort-on-container-exit |
| マージ確認 | merge後の最終設定を事前に確認する | docker compose config |
| 選択起動 | profilesで監視・デバッグサービスを環境別に制御 | docker compose --profile monitoring up -d |
| WebUI連携 | Open WebUIをcomposeに追加 | OLLAMA_BASE_URL=http://ollama:11434 |
| 日常運用 | ログ確認・モデル更新・バックアップ | docker compose logs -f ollama |
| OOM対処 | コンテナの強制終了原因を調べる | docker inspect ollama --format '{{.State.OOMKilled}}' |
コンテナ化したOllamaをチームで活用する次のステップとして、業務特化AIアシスタントの構築がある。OllamaのModelfileでカスタムモデルを作る方法を参照して、部門ごとのプロンプト設定をチームで使い回す仕組みを整えてほしい。
Dockerによるコンテナ化は、ローカルLLMを「個人の試験環境」から「チームの業務基盤」へ格上げする実践的な手段だ。composeファイル1枚が、将来的な移行や展開のコストを大幅に下げてくれる。
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