AWSアーキテクチャ図をLucidchartで設計する実践手順|マルチAZ冗長構成テンプレート

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「AWSのアーキテクチャ図、PowerPointで適当に描いてるけど、AWS公式アイコンはどこで手に入る?」
「マルチAZ構成の図を描こうとしたら、どの図形を使えばいいか分からなくて手が止まった」

AWSの設計書において、アーキテクチャ図は構成の正確さを伝える核心ドキュメントです。あいまいな図でチームレビューに臨むと、確認漏れが増え、本番構築後に想定外の手戻りが発生します。特にマルチAZ冗長構成は、VPC・サブネット・セキュリティグループの配置が複雑なため、図の精度が設計品質を直接左右します。

この記事では、AWS公式シェイプライブラリを内蔵したクラウドダイアグラムツール「Lucidchart(ルシッドチャート)」を使って、AWSアーキテクチャ図を設計する実践手順を解説します。VPCとサブネットの基本配置からマルチAZ冗長構成テンプレートの作成方法、設計レビューと共有・バージョン管理まで体系的に習得できます。

この記事のポイント

・LucidchartにはAWS公式シェイプライブラリが内蔵されており無料プランでも利用できる
・VPC・パブリックサブネット・プライベートサブネットをグループ化して構成を視覚的に整理できる
・マルチAZ冗長構成はAZ-a/AZ-cに同構成を複製しALBでルーティングする形が基本テンプレート
・設計図はリンク共有でレビュー依頼でき、変更履歴もバージョンとして保存できる


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AWSアーキテクチャ図が設計品質を左右する理由

AWSでシステムを構築するとき、最初に揃えるべきドキュメントがアーキテクチャ図です。設計の全体像がひと目でわかる図がないと、次の問題が起きます。

・レビューの精度が落ちる:文章だけの設計書はレビュー担当者が全体を頭の中で組み立てなければならず、見落としが増えます
・構築時の判断が属人化する:作業者が設計意図を誤解したまま構築を進めてしまいます
・障害対応が遅れる:冗長構成の設計図がなければ、障害発生時にどこがフェイルオーバーするかを即座に把握できません

AWSアーキテクチャ図には、AWS自身が公開している「AWS Architecture Icons」という公式図形セットがあります。このアイコンを使った図は、AWSドキュメントやホワイトペーパーでも標準的に採用されており、エンジニア間での認識齟齬が起きにくいという利点があります。

Lucidchartは、この公式AWSアイコンをクラウド上で直接使えるダイアグラムツールです。Googleアカウントで無料登録でき、ブラウザだけで作図できます。図をチームと共有してリアルタイムで共同編集したり、設計変更の履歴をバージョンとして管理する機能も備えています。

LucidchartでAWSアーキテクチャ図を描く準備

1. アカウント作成とAWSシェイプライブラリの有効化

まずLucidchartのサイトにアクセスし、Googleアカウントまたはメールアドレスで無料登録します。無料プランでは図のドキュメント数に上限がありますが、AWSシェイプライブラリは利用できます。

ログイン後に新規ドキュメントを作成したら、左サイドバーの「図形」パネルに移動します。検索欄に「AWS」と入力すると「AWS Architecture 2023」「AWS Architecture 2019」などのライブラリが表示されます。「+」ボタンでライブラリをキャンバスに追加してください。

追加後は、カテゴリごとに整理されたAWS公式アイコンが使えるようになります。主なカテゴリは以下の通りです。

・Compute:EC2、Lambda、Elastic Beanstalk など
・Networking & Content Delivery:VPC、ALB、NLB、Route 53、CloudFront など
・Database:RDS、DynamoDB、ElastiCache など
・Storage:S3、EBS、EFS など
・Security, Identity & Compliance:IAM、WAF、Shield など

2. キャンバスの基本操作と命名規則

Lucidchartのキャンバスでは、図形をドラッグ&ドロップで配置し、接続線(エッジ)で繋いでデータフローを表現します。複数の図形を選択してグループ化することで、VPCやサブネットのような「領域」を表現できます。

設計図を読みやすくするための命名規則は、プロジェクトの開始前に決めておくことが重要です。典型的な命名例を以下に示します。

# VPC・サブネットの命名例(環境により異なります) VPC: prd-vpc (CIDR: 10.0.0.0/16) パブリックサブネット: prd-pub-subnet-1a (CIDR: 10.0.1.0/24, AZ: ap-northeast-1a) パブリックサブネット: prd-pub-subnet-1c (CIDR: 10.0.2.0/24, AZ: ap-northeast-1c) プライベートサブネット: prd-prv-subnet-1a (CIDR: 10.0.11.0/24, AZ: ap-northeast-1a) プライベートサブネット: prd-prv-subnet-1c (CIDR: 10.0.12.0/24, AZ: ap-northeast-1c)

CIDRブロックは、VPC全体に大きめの範囲(/16)を割り当て、サブネットにはその中から/24など小さい範囲を切り出します。マルチAZでは、AZごとにサブネットを1つずつ用意します。

マルチAZ冗長構成テンプレートの設計手順

1. VPCとサブネットの配置

まずキャンバスに「VPC」の図形を配置し、大きめに広げます。Lucidchartではグループ機能で図形を入れ子にできるため、VPCの中にサブネットを配置する形が直感的に表現できます。

配置の手順は以下の通りです。

・ステップ1:左サイドバーからVPCアイコンをドラッグしキャンバスに配置。ラベルに「prd-vpc (10.0.0.0/16)」と書く
・ステップ2:VPCの中に水平方向で2列(AZ-a列 / AZ-c列)の空間を設ける
・ステップ3:各列の上段にパブリックサブネット、下段にプライベートサブネットを配置
・ステップ4:サブネットのラベルにCIDR(例: 10.0.1.0/24)とAZ名を記入

この「VPC外殻+左右2列(AZ)+上下2段(パブリック/プライベート)」の格子構造が、マルチAZ設計図の基本テンプレートになります。

2. EC2・ALB・RDSのマルチAZ配置

サブネットが配置できたら、各サービスを適切なサブネットに入れていきます。

・インターネットゲートウェイ(IGW):VPC外(上部)に配置し、VPCと接続線でつなぐ
・ALB(Application Load Balancer):パブリックサブネット(AZ-a/AZ-c両方)にまたがる形で配置
・EC2(Webサーバー):プライベートサブネット(AZ-a)とプライベートサブネット(AZ-c)に1台ずつ配置
・NAT Gateway:パブリックサブネット(AZ-a)に1台(コスト重視の場合)または各AZに1台
・RDS(Multi-AZ):プライベートサブネット(AZ-a)にプライマリ、プライベートサブネット(AZ-c)にスタンバイを配置

AWSのマルチAZは「1つのAZが障害を起こしても、もう1つのAZで継続稼働できる」ことが目的です。設計図上でも、AZ-aとAZ-cが独立した構成を持っていることが視覚的に伝わるよう、左右対称のレイアウトを意識してください。

接続線はデータの流れ(例:「インターネット → IGW → ALB → EC2 → RDS」)に沿って引きます。Lucidchartでは接続線にラベルを付けてポート番号(例: 443、3306)を書き添えると、セキュリティグループの設計意図が一緒に伝わります。

3. セキュリティグループとルートテーブルの表現

セキュリティグループ(SG)はAWSのネットワーク境界を定義する要素であり、アーキテクチャ図に反映しておくと設計の意図が明確になります。

Lucidchartでは、セキュリティグループを点線の矩形で囲む表現が一般的です。例えば:

・sg-alb:ALBを囲む点線矩形。インバウンド80/443をインターネットから許可と注記
・sg-web:EC2(Webサーバー)を囲む点線矩形。インバウンドは sg-alb からのみ許可と注記
・sg-db:RDSを囲む点線矩形。インバウンドは sg-web からのみ3306/5432を許可と注記

ルートテーブルの表記は図を複雑にしがちですが、「パブリックサブネット→IGW経由でインターネットへ」「プライベートサブネット→NAT Gateway経由でインターネットへ」という方向性を矢印と凡例で示す程度でも十分な場合があります。詳細なルートテーブルの内容は、設計書の別シートに記載する方法が現場では多く使われています。

設計図のレビューと共有・バージョン管理

Lucidchartでは、ドキュメントごとに共有リンクを発行できます。「コメントを付けられる」権限でリンクを送れば、レビュー担当者がキャンバス上の任意の場所にコメントを書き込めます。この機能により、メールやSlackで設計書のコピーを都度送る手間が省けます。

バージョン管理は「ファイル → バージョン履歴」から過去の状態を確認・復元できます。「設計初版」「VPC CIDR変更」のようにバージョンに名前を付けておくと、後から変更経緯を追いやすくなります。

Lucidchartはそのほか、以下のエクスポート形式にも対応しています。

・PNG/PDF:設計書に添付する画像として使用
・draw.io(.xml):draw.io(diagrams.net)へのエクスポートが可能(無料ツールとの互換性)
・Visio(.vsdx):Microsoft Visio形式へのエクスポート(有料プラン)

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よくある設計ミスとトラブルシュート

AWSアーキテクチャ図の作成でよくつまずくポイントを整理します。

「サブネットがAZをまたいで描かれている」
AWSのサブネットは1つのアベイラビリティゾーン(AZ)に属します。図の上でサブネットを2つのAZ列にまたがって描くと、設計の誤りに見えます。サブネットは必ずどちらか一方のAZ列の中に収めてください。

「IGWが2つ描かれている」
インターネットゲートウェイはVPCにつき1つです。マルチAZ設計でも共用の1個だけを描きます。混乱のもとになるため、IGWはVPCの外側(上部)に1つだけ配置してください。

「NAT GatewayをプライベートサブネットへREに配置している」
NAT GatewayはパブリックサブネットへReに置きます。プライベートサブネットへのEC2からNAT Gatewayを経由してインターネットへ出る、という流れを図に反映してください。NAT Gatewayを誤ってプライベートサブネットへ入れると、インターネット通信の設計が成立しません。

「RDSのMulti-AZスタンバイが独立したインスタンスとして描かれている」
Amazon RDSのMulti-AZ配置では、スタンバイインスタンスはエンドポイントを共有しており、アプリケーションから直接アクセスはできません。図にはプライマリとスタンバイを両方描きつつ、「フェイルオーバー用(アプリからの直接アクセス不可)」という注釈を加えると正確さが伝わります。

「AWS CLIで構成を確認したい場合」
設計図と実際のリソースが一致しているか確認するには、AWS CLIのコマンドが使えます。

# VPCの一覧確認(出力例:環境により異なります) aws ec2 describe-vpcs \ --query 'Vpcs[*].{VpcId:VpcId,CIDR:CidrBlock,Name:Tags[?Key==`Name`].Value|[0]}' \ --output table # サブネットとAZ確認(出力例:環境により異なります) aws ec2 describe-subnets \ --query 'Subnets[*].{SubnetId:SubnetId,AZ:AvailabilityZone,CIDR:CidrBlock,Name:Tags[?Key==`Name`].Value|[0]}' \ --output table

設計図と照らし合わせながら確認することで、CIDRの割り当てやAZの配置が意図通りになっているかを検証できます。

まとめ

AWSアーキテクチャ図をLucidchartで作成する際の要点をまとめます。
項目 ポイント
シェイプライブラリ 「AWS Architecture 2023」ライブラリを有効化して公式アイコンを使う
基本レイアウト VPC外殻+左右2列(AZ)+上下2段(パブリック/プライベート)
冗長配置 ALBはAZ間でまたがらせ、EC2/RDSは各AZに1つずつ
セキュリティグループ 点線矩形でSGを表現し、許可ルールを注記する
共有・レビュー リンク共有でコメントを付けられる権限を設定
バージョン管理 変更ごとにバージョン名を付けて履歴を残す
よくあるミス IGWは1つ・NAT GWはパブリックサブネット・RDSスタンバイへの直接アクセス不可を注記

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リナックスマスター.JP(代表 宮崎智広)

株式会社イーネットマーキュリーが運営するLinux教育サイトです。代表の宮崎智広は現役のLinuxサーバー管理者として20年以上の実務経験を持ち、累計3,100名以上のエンジニアを指導してきました。実践型のLinuxセミナーや無料マニュアルの配布を通じてLinux人材の育成に取り組んでいます。