本番LinuxサーバーにUbuntu ServerとRocky Linuxのどちらを選ぶか|サポート期間・パッケージ管理・運用コストの判断基準

宮崎智広 この記事の監修:宮崎智広(Linux実務・教育歴20年以上・受講者3,100名超)
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「本番サーバーのOSを決めなければならないが、Ubuntu ServerとRocky Linux、どちらにすればいいかわからない」
「CentOSの移行先として検討しているが、サポート期間と運用コストの違いが整理できていない」

Ubuntu ServerとRocky Linuxはどちらも無償で使えるLinuxサーバーOSです。しかし「なんとなく知っている方にする」という選び方は、3年後・5年後に大きな運用コストとして跳ね返ってくることがあります。

この記事では、linux ubuntu server 選定において判断を迷いやすい3つの軸——サポート期間・パッケージ管理(apt vs dnf)・Red Hat互換要件——を実務の視点で整理します。Rocky Linux 9 / Ubuntu 24.04 LTSを現場で扱ってきた経験をもとに、「どちらを選ぶか」の判断基準を具体的に示します。

この記事のポイント

・Ubuntu Server LTS は標準5年、Ubuntu Pro で10年に延長できる
・Rocky Linux はRHEL互換を10年保証するが独立コミュニティ運営のリスクがある
・Red Hat互換要件がなければ Ubuntu Server が選択の筆頭候補になる
・チームの既存スキルとパッケージエコシステムが最終的な決め手になる


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サポートライフサイクルを3段階で正しく把握する

OSを選ぶ際に最初に確認すべきは「いつまでセキュリティパッチが提供されるか」です。ここを誤ると、サポート切れのOSを本番で動かし続けるリスクを抱えることになります。

1. Ubuntu Server LTSの標準サポート期間(5年)

Ubuntu ServerのLTS(Long Term Support)リリースは、リリース日から5年間のメインテナンスサポートが付属します。

・Ubuntu 22.04 LTS — 2022年4月リリース、標準サポート終了:2027年4月
・Ubuntu 24.04 LTS — 2024年4月リリース、標準サポート終了:2029年4月
・Ubuntu 26.04 LTS — 2026年4月リリース、標準サポート終了:2031年4月

実際のサーバーでサポート終了日を確認するには、次のコマンドを使います。

# Ubuntu ServerのOS情報とサポート情報を確認する lsb_release -a ubuntu-security-status

Ubuntu 24.04 LTSの実行例:

$ lsb_release -a No LSB modules are available. Distributor ID: Ubuntu Description: Ubuntu 24.04.2 LTS Release: 24.04 Codename: noble $ ubuntu-security-status 3027 packages installed, of which: 2999 receive package updates with LTSSecurity coverage until 4/2029 1 package is not in a supported layer. Run with --help for more information

「LTSSecurity coverage until 4/2029」の表示で、2029年4月まで標準サポートが続くと確認できます。

2. Ubuntu Pro(ESM)で10年に延長する選択肢

Ubuntu 24.04 LTSに対してUbuntu Pro(無償・最大5台)を適用すると、ESM(Expanded Security Maintenance)によりサポートが10年(2034年4月)まで延長されます。

# Ubuntu Proのステータス確認 pro status

SERVICE ENTITLED STATUS DESCRIPTION esm-apps yes enabled Expanded Security Maintenance for Applications esm-infra yes enabled Expanded Security Maintenance for Infrastructure livepatch yes enabled Canonical Livepatch service This machine is attached to an Ubuntu Pro subscription.

個人・小規模チームは無料で適用でき、エンタープライズはCanonicalと商用契約を結ぶ形になります。2026年以降のLTS移行の考え方についてはUbuntu 26.04 LTS の概要も参照してください。

3. Rocky Linuxの10年サポートとその前提条件

Rocky Linuxはリリースから10年間のサポートを宣言しています。Rocky Linux 9は2032年5月まで対応予定です。しかし、このサポートには重要な前提があります。

Red Hatのソースコード公開継続:Rocky LinuxはRHELのソースコードを元に構築されています。2023年以降、Red HatはソースコードのCentOS Stream外への直接公開を制限しました。Rocky Linuxはこれに対して独自のパッチ方法論で対応していますが、将来的なRHELとの完全互換性は保証の限りではありません
コミュニティ主体の運営:Canonical(Ubuntu)とは異なり、Rocky Linuxは企業バックアップが相対的に薄いです。商用サポートはCIQ社が提供しますが、選択肢の幅はUbuntuより狭くなります

# Rocky LinuxのOS情報を確認する cat /etc/rocky-release cat /etc/os-release | grep -E "^NAME|^VERSION"

$ cat /etc/rocky-release Rocky Linux release 9.4 (Blue Onyx) $ cat /etc/os-release | grep -E "^NAME|^VERSION" NAME="Rocky Linux" VERSION="9.4 (Blue Onyx)"

パッケージ管理(apt vs dnf)が運用コストに与える影響

「apt派」と「dnf派」の差は単なる好みではなく、日々の運用作業量に直結します。

1. コマンド体系と現場の運用慣行

操作 Ubuntu(apt) Rocky Linux(dnf)
パッケージ更新 apt update && apt upgrade dnf upgrade
パッケージ検索 apt search パッケージ名 dnf search パッケージ名
インストール済み確認 dpkg -l パッケージ名 rpm -q パッケージ名
依存関係の確認 apt-cache depends パッケージ名 dnf repoquery --requires パッケージ名
セキュリティ更新のみ適用 apt upgrade --only-upgrade dnf upgrade --security
Rocky Linuxのrpm/dnfパッケージ管理の基礎についてはrpm コマンドの使い方も参照してください。

2. セキュリティパッチの配信速度

CVE(脆弱性)が公表された後、パッチがリポジトリに届くまでの速度は重要な運用指標です。

Ubuntu Server:Canonicalが独自にバックポートして配信するため、多くのCVEは公表から数時間以内にaptリポジトリに反映されます
Rocky Linux:RHELのアドバイザリに基づいてパッチを作成・配信します。Red HatのRHEL向けパッチが出た後、Rocky Linux向けの再構築に1日以内の遅延が生じることがあります

実際にサーバーに適用可能なセキュリティパッチを確認するには:

# Ubuntu Server:適用可能なセキュリティ更新をリスト表示 apt list --upgradable 2>/dev/null | grep -i security # Rocky Linux:セキュリティ更新のみリスト表示 dnf updateinfo list updates security

3. サードパーティソフトウェアの可用性

クラウドネイティブツール(Docker、Kubernetes関連、各種SaaS SDKなど)は、Ubuntu対応のパッケージが先行することが多い傾向があります。

Ubuntu Server:Docker公式リポジトリ、Snap、PPAなど多様な配布チャネルが存在します。新しいソフトウェアのaptパッケージへの収録が比較的早いです
Rocky Linux:RHEL互換のEPEL(Extra Packages for Enterprise Linux)を利用できます。エンタープライズ向けソフトウェアの.rpmパッケージは充実していますが、最新のクラウドネイティブツールはUbuntu対応が先に出ることがあります

「Ubuntu ServerかRocky Linuxか」を3軸で判断する

1. Red Hat互換が必要かどうか

「Red Hat互換が必要」とは具体的に次のどれかに当てはまるケースです。

・RHEL向けに検証・サポートされたソフトウェアやSIerの成果物を使う
・RHEL環境のステージング環境として完全互換性が必要
・企業内にRHEL運用の知識蓄積があり、手順書・運用ドキュメントをそのまま流用したい

上記に当てはまるならRocky Linux(またはAlmaLinux)を選ぶ合理的な理由があります。そうでなければUbuntu Serverを先に検討する方が、エコシステムの広さや商用サポートの選択肢の観点から有利です。

2. 運用チームの既存スキルとエコシステム

チームが日常的に使っているOS環境を優先することは、トラブル対応速度に直結します。

・チームのメンバーがUbuntu/Debianに慣れているなら、aptの操作・設定ファイルの場所・ログパスなどのノウハウがそのまま活かせます
・チームがCentOS/RHELの経験者中心なら、Rocky Linuxはそのコマンド体系・設定作法が引き継げます
・Ansibleやシェルスクリプトによる自動化資産がある場合は、その資産がどちらのOSを前提に書かれているか確認してください

「OSを乗り換えると既存の自動化スクリプトを書き直す工数が発生する」という点は、しばしば過小評価されます。

3. クラウド環境とオンプレミスの違い

クラウドプロバイダーが提供するマネージドサービス(RDS、EKSなど)はOS非依存ですが、EC2やCompute Engineなどのインスタンスを自分で管理する場合は次の点が参考になります。

AWS:Ubuntu ServerとRocky Linuxの両方がAMI(Amazon Machine Image)として提供されています。ただし、AWSの公式チュートリアルはUbuntu Server向けの記述が多い傾向があります
Azure:Canonical(Ubuntuの開発元)とMicrosoftは協業関係にあり、Ubuntu ServerはAzureマーケットプレイスでの対応が手厚いです
オンプレミス:ハードウェアベンダー(HPE、Dell)の動作確認マトリクスを必ず確認してください。一部のファームウェア更新ツールやドライバはRHEL互換OSのみ対応というケースがあります

選定でよくある誤解と落とし穴

誤解1:「Rocky Linuxを選べば10年間安心」
Rocky LinuxはRHELのソースコードに依存しているため、Red Hatの方針変更の影響を受けます。2023年のソースコード公開制限がその一例です。「10年保証」はコミュニティがその方針を維持できることが前提です。

誤解2:「Ubuntuはデスクトップ用でサーバーには向かない」
Ubuntu Serverはデスクトップ版とは完全に別物です。Canonical社が商用サポートを提供しており、AWS・Azure・GCPすべてで一級市民の扱いを受けています。「Ubuntuはデスクトップ用」という認識は10年以上前の話です。

誤解3:「どちらも無償だからコストは変わらない」
ライセンスは無償でも、OSの選択によって「スキル習得コスト」「既存資産の書き直しコスト」「サードパーティソフトの動作確認コスト」が変わります。これが「運用コスト」の実体です。

誤解4:「RHEL互換なら何でも同じ」
Rocky Linux・AlmaLinux・CentOS StreamはいずれもRHEL互換を謳いますが、互換性の精度・アップデートのタイミング・コミュニティの安定性は異なります。「RHEL互換」という言葉だけで選ばず、具体的なサポート体制を確認してください。

まとめ:Ubuntu ServerとRocky Linux 選定基準テーブル

判断軸 Ubuntu Server を選ぶ条件 Rocky Linux を選ぶ条件
サポート期間 Ubuntu Pro(無償最大5台)で10年延長が手軽 標準で10年保証(ただしRHEL依存リスクあり)
パッケージ管理 apt/deb形式。クラウドネイティブツールの対応が早い dnf/rpm形式。エンタープライズ向けソフトが充実
Red Hat互換 不要な場合(クラウドサービス主体など) RHEL互換ソフト・SIer成果物を使う場合
チームスキル Ubuntu/Debian経験者が多い場合 CentOS/RHEL経験者が多い場合
クラウド連携 AWS・Azure・GCPともに充実。Canonical公式サポートあり EPELによるエンタープライズ連携が充実
オンプレミス ハードウェアベンダー対応を事前に確認 RHEL向け対応のハードウェアドライバが使いやすい
商用サポート Canonicalが直接提供(選択肢が広い) CIQ社など(選択肢はUbuntuより限定的)
「どちらが優れているか」ではなく「自分のプロジェクトにどちらが合っているか」が正しい問いです。RHEL互換要件がなく、クラウド中心の構成であればUbuntu Serverが合理的な第一候補になります。Red Hat互換のソフトウェア資産を活かしたいならRocky Linuxに軍配が上がります。いずれにしても、サポート期間とパッケージ管理の違いを理解した上で選定することが、長期的な運用コストの圧縮につながります。

OSを選んだ後に差がつくのは、サーバー構築の「型」を知っているかどうか

Ubuntu ServerでもRocky Linuxでも、OS選定はスタートラインです。本番環境を安定して運用し続けるには、初期設定・セキュリティ設定・パッケージ更新の管理を体系的に身につけることが不可欠です。
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宮崎 智広

この記事を書いた人

宮崎 智広(みやざき ともひろ)

株式会社イーネットマーキュリー代表。現役のLinuxサーバー管理者として20年以上の実務経験を持ち、これまでに累計3,100名以上のエンジニアを指導してきたLinux教育のプロフェッショナル。「現場で本当に使える技術」を体系的に伝えることをモットーに、実践型のLinuxセミナーの開催や無料マニュアルの配布を通じてLinux人材の育成に取り組んでいる。

趣味は、キャンプにカメラ、トラウト釣り。好きな食べ物は、ラーメンにお酒。休肝日が作れない、酒量を減らせないのが悩み。最近、ドラマ「フライトエンジェル」を観て涙腺が崩壊しました。