Ubuntu LTSのサポート期間を運用計画に落とし込む方法|標準保守5年とESM延長を踏まえた更新タイミングの決め方

宮崎智広 この記事の監修:宮崎智広(Linux実務・教育歴20年以上・受講者3,100名超)
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「うちの Ubuntu 20.04 LTS、標準保守はもう終わっているはずだが、セキュリティパッチは本当に当たっているのか」
こういった不安を抱えながらサーバーを運用している担当者は少なくない。逆に「22.04 に移行すべきか、それとも ESM で延命すべきか」という判断に迷うケースも現場では多い。

Ubuntu LTS のサポート期間は「5年の標準保守」と「追加5年の ESM(Extended Security Maintenance)」の2段構えになっており、仕組みを理解すれば根拠のある更新計画を立てられる。

この記事では、ubuntu lts サポート期間の仕組みを整理したうえで、現行サーバーの残存保守期間を確認するコマンド手順、ESM を有効化する Ubuntu Pro の登録手順、そして移行タイムラインの設計方法を解説する。

この記事のポイント

・Ubuntu LTS は「5年標準保守+5年 ESM」で最長10年サポートされる
・ubuntu-security-status コマンドでサポート残存期間が一発確認できる
・Ubuntu 20.04 LTS は 2025年4月に標準保守終了、現在は ESM 期間中(2030年4月まで)
・移行計画は「EOL の3ヶ月前」を着手リミットに設定するのが現場の鉄則


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Ubuntu LTSのサポート期間の仕組み|標準保守5年とESMの2段構え

Ubuntu LTS(Long Term Support)は通常の非 LTS リリースと異なり、長期のセキュリティパッチ提供が保証される。サポートは2段階で構成される。

第1段階: 標準保守(5年)
リリース月から5年間、Main リポジトリおよび Restricted リポジトリのパッケージに対してセキュリティパッチが無償提供される。追加設定なしに apt upgrade を実行するだけでパッチが適用される期間だ。

第2段階: ESM(Extended Security Maintenance・追加5年)
標準保守終了後、Ubuntu Pro(旧 Ubuntu Advantage)に登録することで追加5年間の延長保守が受けられる。ESM には2つのスコープがある。

esm-infra:Main リポジトリのインフラ系パッケージ(OpenSSL、glibc、カーネル等)に対する CVE 修正
esm-apps:Universe リポジトリのアプリケーションパッケージ(Python、PHP、Ruby 等)に対する CVE 修正

両段階を合わせると最長10年間のサポートが受けられる。5年超の稼働を前提とする本番サーバーでは、ESM の有無が移行判断を大きく左右する。

なお、Ubuntu Pro は個人利用(5台まで)なら無償で取得できる。商用・法人環境では Canonical の有償サブスクリプションが必要になる。

現行LTSバージョンのサポート期限一覧(2026年9月時点)

現在リリース済みの Ubuntu LTS 系列と各サポート期限を整理する。

バージョン コードネーム リリース 標準保守 EOL ESM EOL 2026年9月時点の状況
16.04 LTS Xenial Xerus 2016年4月 2021年4月(終了) 2026年4月(終了) ESMも終了。即時移行必須
18.04 LTS Bionic Beaver 2018年4月 2023年4月(終了) 2028年4月 ESM期間中(残約1年半)
20.04 LTS Focal Fossa 2020年4月 2025年4月(終了) 2030年4月 ESM期間中(残約3年半)
22.04 LTS Jammy Jellyfish 2022年4月 2027年4月 2032年4月 標準保守中(残約7ヶ月)
24.04 LTS Noble Numbat 2024年4月 2029年4月 2034年4月 標準保守中(残約2年半)
26.04 LTS 2026年4月 2031年4月 2036年4月 標準保守中(残約5年)
特に注意が必要なのは、Ubuntu 22.04 LTS の標準保守が2027年4月に終了するという点だ。この記事の執筆時点(2026年9月)から約7ヶ月しかない。「まだ大丈夫」と先送りすると、気づいた頃には EOL を過ぎているという事態になりかねない。

サーバーのサポート状況を確認する手順

まず現状把握から始める。複数台のサーバーを管理している場合でも、手順は共通だ。

1. Ubuntu バージョンの確認(lsb_release)

lsb_release -a

実際の出力例(Ubuntu 22.04 の検証サーバー):

No LSB modules are available. Distributor ID: Ubuntu Description: Ubuntu 22.04.4 LTS Release: 22.04 Codename: jammy

Description 行で「LTS」の文字が確認できれば長期サポート版だ。非 LTS(例: 23.10)は通常9ヶ月しかサポートされないため、本番環境では必ず LTS を選ぶこと。

2. パッケージのサポート状況を確認(ubuntu-security-status)

Ubuntu 20.04 以降では ubuntu-security-status コマンドでサポート期間の残存状況を確認できる。

ubuntu-security-status

Ubuntu 22.04(標準保守中・ESM 未加入)の出力例:

1086 packages installed: 1053 packages from Ubuntu Main/Restricted repository 33 packages from Ubuntu Universe/Multiverse repository Main/Restricted security updates: Supported until 2027 Universe/Multiverse security updates: Supported until 2032 (ESM Apps)

Ubuntu 20.04(標準保守終了・ESM 加入済み)の出力例:

Main/Restricted security updates: Enabled, supported until 2030 (ESM Infra enabled) Universe/Multiverse security updates: Enabled, supported until 2030 (ESM Apps enabled)

ESM が有効になっていれば「enabled, supported until YYYY」と表示される。「ESM Infra enabled」の記載がない場合は、標準保守終了後のパッチが当たっていないことを意味するため要注意だ。

3. Ubuntu Pro の状態確認(pro status)

ESM を利用するには Ubuntu Pro にアタッチする必要がある。現在の状態は pro status で確認する。

pro status

未アタッチ状態の出力例:

SERVICE ENTITLED STATUS DESCRIPTION esm-infra no — Expanded Security Maintenance for Infrastructure esm-apps no — Expanded Security Maintenance for Applications This machine is not attached to an Ubuntu Pro subscription. To attach run: pro attach <token>

アタッチ済みで ESM 有効の出力例:

SERVICE ENTITLED STATUS DESCRIPTION esm-infra yes enabled Expanded Security Maintenance for Infrastructure esm-apps yes enabled Expanded Security Maintenance for Applications Enable services with: pro enable <service>

ESMを有効化する|Ubuntu Proの登録手順

標準保守が終了したサーバーを継続運用する場合、Ubuntu Pro への登録が必要になる。

1. Ubuntu Proアカウントの取得とトークン入手

ubuntu.com/pro にアクセスし、Ubuntu One アカウントでサインイン(または新規作成)する。「Free Personal Token」を選択するとトークンが発行される。個人利用なら最大5台まで無償で利用できる。法人・商用環境は Canonical の有償プランを選択する。

トークンは画面上に表示される英数字の文字列(例: C1r2a3s4h5k6a7b8c9d0...)だ。このトークンをサーバーで使用する。

2. サーバーへのアタッチとESM有効化

ubuntu-pro-client パッケージがインストール済みであることを確認してからアタッチを実行する。

# install ubuntu pro client if not present apt install ubuntu-pro-client # attach to ubuntu pro with your token pro attach <取得したトークン文字列>

アタッチ成功時の出力例:

Attaching the machine... Enabling default service esm-infra Updating package lists Ubuntu Pro: ESM Infra enabled This machine is now attached to 'Ubuntu Pro'

アタッチ後は ESM リポジトリからセキュリティパッチが自動的に取得されるようになる。apt upgrade を実行することでパッチが適用される。

esm-apps(Universe リポジトリ)の ESM が必要な場合は個別に有効化する:

pro enable esm-apps

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運用計画への落とし込み方|EOLを基準にした更新タイミングの決め方

確認作業が終わったら、次は実際の運用計画に反映させる。

1. サーバー棚卸しとEOL残日数の一覧化

複数台のサーバーを管理している場合は、まず一覧を作る。EOL 残日数を自動計算するワンライナーが便利だ。

# Ubuntu 22.04 LTS EOL(2027-04-01)までの残日数を計算 EOL_DATE="2027-04-01" DAYS_LEFT=$(( ( $(date -d "$EOL_DATE" +%s) - $(date +%s) ) / 86400 )) echo "Ubuntu 22.04 LTS EOL まで ${DAYS_LEFT} 日($(date -d "$EOL_DATE" +"%Y年%m月%d日") まで)"

2026年9月時点での出力例:

Ubuntu 22.04 LTS EOL まで 209 日(2027年04月01日 まで)

この数字をスプレッドシートなどに記録し、全サーバーの EOL 残日数を並べると優先度が一目瞭然になる。

2. EOLの3ヶ月前ルール|着手リミットの設定

20年以上サーバーを運用してきた経験から言うと、「EOL の直前に移行する」は必ず失敗する。本番環境の移行には想定外のトラブルが必ずある。最低でも3ヶ月の余裕が必要だ。

EOL の12ヶ月前:移行先バージョンの検証環境を構築し、アプリケーション互換性テストを開始
EOL の6ヶ月前:移行スケジュールを確定し、業務部門への告知・調整を完了
EOL の3ヶ月前:本番移行の着手リミット。ここを過ぎると EOL 後のパッチ空白期間が生まれるリスクがある
EOL の1ヶ月前:最終確認・ロールバック手順の再検証

3. アップグレードか ESM 延命か|判断の基準

標準保守終了後の選択肢は大きく2つある。

ESM(Ubuntu Pro)で延命を選ぶ場合:
・アプリケーションの依存関係が複雑でバージョンアップに高リスクが伴う
・移行工数を捻出できない(人員・予算の制約)
・1~2年以内にサーバー廃止予定がある(ESM期間中に廃止できる見通しがある)

LTS アップグレードを選ぶ場合:
・3年以上の継続稼働が前提で ESM の期限も視野に入ってきた
・新しい OS 機能(systemd の新バージョン、カーネルの最新ドライバ等)が必要
・アプリケーションが新 LTS に対応済みで移行コストが低い

Ubuntu 22.04 LTS から 24.04 LTS へのインプレースアップグレードは do-release-upgrade コマンドで実施できる。移行先の Ubuntu 26.04 LTS の概要 も確認したうえで、2段先のバージョンへの移行計画を立てると長期運用のコストが下がる。

よくあるトラブルと対処

「pro attach」実行後も ESM パッケージが更新されない

アタッチ直後は apt のパッケージリストが古いままになっていることがある。以下を実行してリストを更新する。

apt update apt list --upgradable

ESM リポジトリ(esm.ubuntu.com)からのパッケージが表示されれば正常に機能している。

「ubuntu-security-status」コマンドが見つからない

Ubuntu 18.04 以前や最小インストール環境では ubuntu-security-status が含まれていないことがある。

apt install ubuntu-advantage-tools

インストール後は ubuntu-security-status コマンドが使えるようになる。

ESM アタッチ後に「Token is invalid」エラーが出る

トークンのコピー時に空白や改行が混入した可能性がある。Ubuntu Pro のダッシュボードからトークンを再取得し、ダブルクォートで囲まずに直接入力する。コピー&ペーストよりも手入力での確認が確実だ。

本記事のまとめ

Ubuntu LTS のサポート期間は「標準保守5年+ESM5年」の2段構えで、計画次第で10年の安全な運用が可能だ。重要なのは EOL を「知っているだけ」にせず、具体的なタイムラインに落とし込むことにある。

やりたいこと コマンド
Ubuntu バージョンを確認する lsb_release -a
サポート残存期間を確認する ubuntu-security-status
Ubuntu Pro の状態を確認する pro status
Ubuntu Pro にアタッチする pro attach <token>
ESM Apps を有効化する pro enable esm-apps
EOL 残日数を計算する echo $(( ( $(date -d "YYYY-MM-DD" +%s) - $(date +%s) ) / 86400 ))
現場では「20.04 のサポートはまだ先のはず」という思い込みのまま、実は標準保守が切れて無防備な状態が続いているサーバーを何台も見てきた。今すぐ ubuntu-security-status を実行して現状を把握してほしい。
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宮崎 智広

この記事を書いた人

宮崎 智広(みやざき ともひろ)

株式会社イーネットマーキュリー代表。現役のLinuxサーバー管理者として20年以上の実務経験を持ち、これまでに累計3,100名以上のエンジニアを指導してきたLinux教育のプロフェッショナル。「現場で本当に使える技術」を体系的に伝えることをモットーに、実践型のLinuxセミナーの開催や無料マニュアルの配布を通じてLinux人材の育成に取り組んでいる。

趣味は、キャンプにカメラ、トラウト釣り。好きな食べ物は、ラーメンにお酒。休肝日が作れない、酒量を減らせないのが悩み。最近、ドラマ「フライトエンジェル」を観て涙腺が崩壊しました。