Rocky Linuxの商用サポート「RLC Pro」国内販売開始|エクセルソフトがCIQ代理店に、無償版との違いと選び方

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宮崎智広 この記事の監修:宮崎智広(Linux実務・教育歴20年以上・受講者3,100名超)
2026年6月10日、エクセルソフトが米国 CIQ 社の日本初の正規販売代理店として、Rocky Linux の商用サポート付き製品「RLC Pro」をはじめとする CIQ 製品群の国内販売を開始しました。エクセルソフトのプレスリリースCodeZine の報道で確認できます。

これは単なる新製品の話ではありません。CentOS 終焉のあと、RHEL のサブスクリプションを避けて無償の Rocky Linux や AlmaLinux に逃げてきた現場に、「では本番で有償サポートが要るときどうするか」という次の問いが突きつけられた、という出来事です。

20年以上 Linux サーバーの現場に立ってきた立場で言うと、無償の Rocky を使えること自体はもう前提です。差がつくのは「どこから先は有償サポートに切り替えるべきか」を自分の言葉で語れるかどうか。今回の RLC Pro 国内販売は、その判断軸を整理し直す良いきっかけになります。

この記事のポイント
  • エクセルソフトが CIQ 社の日本初の正規販売代理店となり、2026年6月10日から RLC Pro 等を国内販売開始(日本語サポート・円建て見積・請求書払い対応)。
  • CIQ は Rocky Linux を主導する Gregory Kurtzer 氏が創業した企業で、Rocky Linux の創設スポンサー。RLC Pro は Rocky Linux に SLA ベースの商用サポートと FIPS 140-3 検証を付けたエンタープライズ版。
  • 無償コミュニティ版 Rocky Linux にはベンダー保証も SLA もない。RLC Pro はそこに「契約に基づく保証と一次切り分けの後ろ盾」を足す製品。
  • 金融・公共・規制業種、SLA や認証が要る本番では有償が現実解。学習・検証・社内ツール程度なら無償コミュニティ版で十分という両論併記が妥当。
  • 価格は個別見積りで公開されていない。RHEL 代替の選択肢が「無償/有償サポート付き/サポートのみ別ベンダー」と広がった構図を押さえておく。

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エクセルソフトが CIQ の国内代理店になったというニュース

2026年6月10日に何が始まったか

エクセルソフトの発表によると、同社は米国 CIQ 社と販売代理店契約を締結し、2026年6月10日より CIQ 製品群の国内取り扱いを開始しました。エクセルソフトは海外開発ツールの国内販売で実績のある会社で、今回は CIQ の日本における正規販売代理店という位置づけです。

国内代理店が入ることの実務的な意味は、ライセンスを英語サイトのクレジットカード決済で買うのではなく、日本円での見積書発行・請求書払いに対応し、導入前の相談から要件整理、購入後の問い合わせまで日本語でやり取りできる点にあります。稟議と相見積もりが前提の法人調達では、ここが入り口の壁になりがちなので、商流が整う意味は小さくありません。

CIQ とは何者か

CIQ は米国ネバダ州リノに本社を置く、エンタープライズ Linux インフラを手がける企業です。重要なのは、CIQ が Rocky Linux の創設スポンサーであり、創業者の Gregory Kurtzer 氏が Rocky Linux を立ち上げた張本人だという点です。CIQ の founding story で確認できます。

Kurtzer 氏は元々 CentOS の共同創設者でもあります。2020年12月に Red Hat が CentOS の開発方針を CentOS Stream へ切り替えると発表したのを受け、本来の CentOS が担っていた「RHEL 互換の無償ディストリ」を取り戻すために立ち上げたのが Rocky Linux です。その商用サポートを提供する会社が CIQ、という関係になります。RHEL 代替を「本家に近い人たちが商用で支える」という座組みは、移行先を検討するうえで安心材料になりやすい背景です。

RLC Pro と CIQ 製品ラインアップを整理する

Rocky Linux 系:RLC Pro / Hardened / AI

今回国内販売が始まった製品の中心は、Rocky Linux に商用サポートを付けた RLC Pro(Rocky Linux from CIQ)です。プレスリリースの記述をもとに整理します。

  • RLC Pro:Rocky Linux の商用サポート付きエンタープライズ向けサブスクリプション。バグを含む挙動レベルまでエンタープライズ Linux との互換性を保ち、FIPS 140-3 検証を含む高度なセキュリティ・コンプライアンス機能と、SLA に基づく商用サポートを提供。
  • RLC Pro Hardened:厳格なセキュリティ・コンプライアンス要件が求められる環境向けに最適化したセキュリティ強化版。
  • RLC Pro AI:HPC/AI/ML ワークロード向けに最適化したエディション。
「無償の Rocky Linux と同じバイナリ互換を保ったまま、保証とサポートと認証を足したもの」と捉えると分かりやすいです。

HPC・インフラ自動化系:Fuzzball / Warewulf Pro / Apptainer / Ascender Pro

CIQ は Rocky Linux 単体ではなく、HPC・AI 基盤まわりのツール群を持っています。今回の代理店契約ではこれらも取り扱い対象です。

  • Fuzzball:HPC/AI ワークロードを管理するオーケストレーションプラットフォーム。
  • Warewulf Pro:HPC クラスターの構築・運用を行うプロビジョニングプラットフォーム。Warewulf 自体は HPC 業界で広く使われてきた実績のあるプロジェクトです。
  • Apptainer:HPC 環境向けのコンテナシステム。旧称 Singularity として知られ、研究計算の世界で定着しているコンテナ実装です。
  • Ascender Pro:インフラ自動化プラットフォーム。RBAC や監査ログといった統制機能を備える構成管理基盤です。
linuxmaster の読者層からすると Rocky 系の RLC Pro が主役ですが、「CIQ は AI・HPC のスタック全体を商用で揃えに来ている会社」という全体像を押さえておくと、なぜ Rocky Linux に商用サポートを付けるビジネスが成り立つのかが見えてきます。

価格は個別見積り

価格について先に書いておくと、RLC Pro を含む CIQ 製品の国内価格は公開されておらず、個別見積りです。ノード数・サポートレベル・契約期間で変わる法人サブスクリプションなので、具体的な金額は本記事でも出しません。検討する場合はエクセルソフト経由で見積もりを取る前提になります。


Rocky Linuxの商用サポート「RLC Pro」国内販売開始|エクセルソフトがCIQ代理店に、無償版との違いと選び方 - 解説1

無償の Rocky Linux と RLC Pro は何が違うのか

「同じバイナリ」でも持っているものが違う

ここが本記事の山場です。RLC Pro は無償の Rocky Linux と高い互換性を保っていますが、「動くもの」が同じでも「契約として持っているもの」が決定的に違います

無償のコミュニティ版 Rocky Linux は、RHEL 互換でコミュニティが保守する優れたディストリですが、ベンダーによる SLA も保証もありません。トラブル時の一次切り分けは自分たちで完結させる前提です。RLC Pro は、そこに契約ベースのサポートと認証を足します。整理すると次のとおりです。

観点 コミュニティ版 Rocky Linux(無償) RLC Pro(有償)
費用 無償 有償サブスクリプション(個別見積り)
RHEL 互換性 あり(コミュニティ保守) あり(挙動レベルまで互換を維持)
商用サポート・SLA なし(コミュニティ/自力) SLA に基づく商用サポート
セキュリティ認証 標準(公式の認証保証なし) FIPS 140-3 検証など
規制・監査対応 自力で証跡を整える コンプライアンス要件に対応した構成・サポート
向く用途 学習・検証・社内ツール・自走できる本番 保証・SLA・認証が要る本番、規制業種

表の核心は 「商用サポート・SLA」「セキュリティ認証」「規制・監査対応」の3行です。OS のバイナリそのものではなく、その周りに付く保証と後ろ盾が有償版の価値です。

「サポート契約がある」ことの実務的な重み

現場で効くのは、障害時に「ベンダーに切り分けを投げられる窓口がある」という一点です。深夜に本番が落ちて、それが OS 起因なのかアプリ起因なのか切り分けがつかないとき、SLA 付きのサポート契約があれば一次回答の責任を分担できます。無償版では、その切り分けを最後まで自分たちで背負います。

逆に言えば、社内に十分なトラブルシュート体制があり、コミュニティと自力で完結できる現場では、有償サポートの価値は相対的に下がります。だからこそ「どんな現場が有償を選ぶか」を次に整理します。

どんな現場が商用サポートを選ぶべきか

有償サポート(RLC Pro)が現実解になる現場

経験上、次のいずれかに当てはまるなら有償サポートを真剣に検討する価値があります。

  • 金融・公共・規制業種でサポート契約が事実上必須:調達やセキュリティ基準で「ベンダーサポートのある OS」が要件化されているケース。無償版だと監査で引っかかります。
  • SLA と保証が要る本番:止まると売上・信用に直結するシステム。一次回答時間が契約で担保されることに価値がある現場。
  • FIPS 140-3 などの認証要件がある:暗号モジュールの認証が調達条件に含まれる場合、コミュニティ版では満たせません。
  • 一次切り分けの後ろ盾が要る:社内に深い Linux トラブルシュート体制がなく、障害時に「相談できる相手」が必要な組織。

無償のコミュニティ版で十分な現場

一方で、次のような用途なら無償の Rocky Linux で十分というのが正直なところです。背伸びして有償契約を結ぶ必要はありません。

  • 学習・検証環境:手を動かして覚える用途。むしろ無償で何度でも作り直せる方が学習効率が高い。
  • 社内ツール・非クリティカルな内部システム:止まっても業務が即停止しない範囲。
  • 自走できる本番:社内に Linux を深く扱えるチームがあり、コミュニティ情報と自力で運用を完結できる現場。
判断軸を一言でまとめるなら、「止まったときに自分たちで最後まで切り分けられるか」と「契約・認証として保証が要るか」の二つです。技術的に Rocky を使えるかどうかは、もはや判断軸ではありません。

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RHEL 代替の選択肢マップを描き直す

2026年時点の主な選択肢

CentOS 終焉から数年が経ち、RHEL 互換・RHEL 代替の選択肢はかなり整理されてきました。RLC Pro 国内販売を機に、現在地を簡潔にマッピングしておきます。

  • RHEL(有償サブスクリプション):本家。Red Hat のサポートと長期保証が要るならここ。コスト最大。
  • AlmaLinux(無償):RHEL 互換の無償ディストリ。コミュニティ財団が運営。無償運用の有力候補。
  • Rocky Linux(無償):RHEL 互換の無償ディストリ。CIQ が創設スポンサー。無償運用の有力候補。
  • RLC Pro(Rocky の商用サポート付き):Rocky のバイナリ互換を保ったまま SLA・FIPS・保証を足した有償版。「無償 Rocky で運用してきたが本番で保証が要る」現場の受け皿。
  • SUSE のサポートに寄せる選択肢:OS は RHEL 系のまま、延命サポートだけ別ベンダーに寄せるという第三の道も最近は話題になっています。
ポイントは、「無償か有償か」の二択ではなくなったことです。無償ディストリ(Alma/Rocky)を使いつつ、必要な範囲だけ有償サポートに切り替える、という段階的な設計ができるようになりました。RLC Pro は「無償 Rocky からそのまま地続きで有償サポートへ上がれる」点で、移行コストの低い受け皿になります。

移行事例は断定せず、構図として押さえる

国内でも、CentOS/RHEL の延命やサポート切り替えを検討する大手の動きが報じられることが増えてきました。ただし個別事例の詳細は伝聞も多いため、本記事では特定企業の選定理由を断定しません。大事なのは「無償ディストリで走らせてきた本番に、ある日サポートと保証の要件が乗ってくる」という流れ自体が一般化していることです。RLC Pro 国内販売は、その受け皿が日本語商流で整ったという出来事として理解するのが正確です。


Rocky Linuxの商用サポート「RLC Pro」国内販売開始|エクセルソフトがCIQ代理店に、無償版との違いと選び方 - まとめ

linuxmaster 読者にとっての教訓

「使える」の次は「どこで有償に切り替えるか」

今回の一件から現役 Linux 管理者・これから現場を目指す人が持ち帰るべきは、シンプルな一本です。Rocky や AlmaLinux を無償で使えるスキルは、もはや前提。差がつくのは「どこから先は有償サポートに切り替えるべきか」を自分の言葉で説明できるか

面接でも現場でも、「Rocky を入れられます」より「この本番は規制要件と SLA があるので RLC Pro を提案します、ここの検証機は無償 Rocky で十分です」と切り分けて語れる人の方が、はるかに信頼されます。技術の手数だけでなく、コストと保証を天秤にかけた判断ができることが、現場で求められる力です。

無償と有償の境界線を引けるエンジニアになる

無償ディストリの普及で、Linux は「タダで使える」のが当たり前になりました。だからこそ逆に、「ここから先はお金を払って保証を買うべきだ」と線を引ける判断力が希少になっています。RLC Pro のような商用サポート製品の存在意義を理解し、自分の現場に当てはめて提案できること。それが、コマンドを叩けるだけのエンジニアと、システムの責任を負えるエンジニアを分けるラインです。

無償の Rocky で土台を固め、必要になったら有償サポートへ地続きで上がれる。その全体像を描けるようになっておくことを、強くおすすめします。

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宮崎 智広

この記事を書いた人

宮崎 智広(みやざき ともひろ)

株式会社イーネットマーキュリー代表。現役のLinuxサーバー管理者として20年以上の実務経験を持ち、これまでに累計3,100名以上のエンジニアを指導してきたLinux教育のプロフェッショナル。「現場で本当に使える技術」を体系的に伝えることをモットーに、実践型のLinuxセミナーの開催や無料マニュアルの配布を通じてLinux人材の育成に取り組んでいる。

趣味は、キャンプにカメラ、トラウト釣り。好きな食べ物は、ラーメンにお酒。休肝日が作れない、酒量を減らせないのが悩み。最近、ドラマ「フライトエンジェル」を観て涙腺が崩壊しました。


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